Thursday, July 02, 2009

レッドウッドカーテンの向こう側

夕食会、送別会、オーストラリアからの来客、そして注水システムのオートメーション化などで大忙しの一週間が終わり、最高に気持ちいい夏日を後に中央カリフォルニアの牧場から北上。神秘的な霧に包まれたハンボルトに到着。

カリフォルニアの最北端は「忘れられた国」でもある。南カリフォルニアの人たちに「北カリフォルニア」というとみんなサンフランシスコを想像するようだが、さらに北、ソノマやナパのワインカントリーのもっと北、メンドシーノ・カウンティの中央より北はレッドウッドの森林のカーテンにより少々孤立された地域だ。

特に今いるアケータは特別な町だと思う。可愛いビクトリアンスタイルの町並み、カラフルな住民、自然の大聖堂のようなレッドウッドの森林。そして何といっても不思議な時間軸。21世紀のネット環境(ありがとう!)と60年代社会が共存しているのだ。

数年前、アケータに到着したその日、ダウンタウンの交差点で停止していると年配のヒッピーが我々のトラックの前に立ち止まり、ガラスのパイプを子供が飛行機を“飛ばす”ようにボンネットの上に飛ばした。
「アケータへようこそ!」
ビッグドッグと笑ったのを覚えている。

今回はそんな素敵なウェルカムはなかったが、男性ファッションの進化に感心させられている。以前はドレッドロックとネルシャツが主流だったが、最近はとてもクリエイティブになっているようだ。ヒラヒラした黒いロングスカート姿のおじさん、キルトとパンク風の革ジャンスタイルの年配ロッカー、眉の上に奇麗な点をタトゥーした男などなど。なかなか楽しい。

でも、それだけではないのだ。やはり“移動”するのはいいことだ。牧場は私にとって楽園だが、あまり長くいるとなんだかブルジョワっぽくなっている自分が気になる。過保護になってしまうようだ。悟りへの道が逆行してしまう。

「君たちは本当にミニマルだよ」と観察したのは途中のサンフランシスコで合流したビッグドッグの高校時代の友人。
「ミニマル以上よ!ゼンよ!」彼のワイフも笑う。
確かに我々はあまり「モノ」を所有していない。だが、私は土地に対する深い執着がある。所有権って偽りなのにね。時間だって、命だって、すべて借り物だから。所有していると信じるから不幸になるのだと思う。

そういえば、ハワイで取材したスラックキーの天才、マカナも言っていた。「アクセスは所有権を勝る」

そうだよな。だから”手放す”ことは精神にいいのだ。
空っぽの家でスポンジマットの上で寝て、ビッグドッグの学生時代からのガラクタで暮らすのもいいのだ。
古いTシャツは気持ちいい枕カバー。大昔、パイが入っていたアルミのプレートは今でもお皿として使える。
毎日、ボロを着ていてもどうでもいい。オシャレは町の男たちに任せよう。

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