Sunday, November 16, 2008

英語人

弟が始めて日本を訪れた時、まったく日本語が話せなかった。彼は日本語と英語の中で育ったのだが、バイリンガルではなかった。二つの異なる言語はどうやら幼い彼を混乱させたのか保育園に入るまでほとんど話せなく、まわりの人は知恵おくれだと思っていたのだろう。やっと英語で会話ができるようになったと思ったら今度は日本だ。

近所の子供たちは外人ではないが、英語でしか話せない彼のことを「英語人」と呼んでいた。。便利な言葉だ。「英語圏の人々」より簡単でいい。

このメキシコの漁村には冬になると「英語人」がわんさとやってくる。主にカナダからだが、米国からもキャンピングカーやバン、レンタカー、タクシー、バス、そしてヨットでぞろぞろと気候を追いながらやってくる。

日本人も日本語を話そうとする外人に優しいが、地元のメキシコ人もとても寛容だ。私はしょっちゅう動詞の活用を間違えているし、スペイン語とイタリア語、フランス語をごっちゃにしてしまうこともよくある。それでも、みんなわかってくれる。

でも英語人には英語人特有の問題がある。発音だ。
英語ができれば、スペイン語の発音は簡単なはずだが、英語人はどうしても母音に惑わされてしまう。英語の母音はいくつもの発音があるし、曖昧でもある。方言でかわるのは主に母音だ。(Bikeは米語では「バイク」だが、スコットランドでは「ベイク」と発音する。)
「だから不思議なのよ。スペイン語の母音は日本語と同じように変わらないじゃない。変わらない5つの音を覚えるのなんて簡単じゃない。逆に英語の変化だらけの母音の方が難しいし、その難しい言葉が話せるなら、変化しない母音はもっと優しいはずじゃない?」といつも不思議に思うのだ。

ハワイにいけば「ホノルル」のはずの地名が「ハーナルールー」と発音される。
牧場から近いサンルイスオビスポのメインストリートHiguerraもスペイン語の「イチジク」で「イゲーラ」(ゲはソフト)と発音すべきなのにテレビのニュースキャスターまでが「ハイゲーラ」と呼んでいる。
「発音できないんだったらfigに改名すればよかったのに」とビッグドッグは笑う。

しかし、彼でさえ、スペイン語母音の発音を間違える。日本語もそうだが、スペイン語も母音が違うとまったく別の言葉になってしまう。
昔、日本で暮らしていた頃、彼はよく怒っていた。「日本人は勘が悪すぎる!レストランで ”ミゾ下さい” と言ってもわかってくれない!」
そりゃそうだろう。レストランだったら「ミゾ」は「水」かもしれないし「味噌」なのかもしれない。たぶん、英語人には「z」が肝心で「a」や「u」はそれほどでもないのだろう。

問題は地元のメキシコ人たち。我々の間違いをなかなか直してくれない。だから英語人は何年ここで暮らしてもbarraを「バッラ」ではなく「ベーラ」と発音してしまう。グァダラハラもグァダラヘーラだ。(そして、友人はなんど教えても「天ぷら」のことをテンピューラと呼んでしまう。)スペイン語人になるにはそうとう時間がかかりそうだ。

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