Sunday, December 21, 2008

オン・ザ・ロード、メヒコ版

最近の旅行者は飛行機でひょいっと簡単に海外にいき、言葉の問題もないリゾートに泊まり、リゾートが提供する食事やアクティビティを楽しみ故郷に帰るケースが多いが、昔は自分の国を一歩出ただけで完璧に異国だった。旅そのものも訳の分からないバスや電車でとんでもないところに行ってしまったり、望まなくても冒険に満ちていた。世界が狭くなると、旅の冒険も薄れてしまうというのがちょっと悲しい。

でも望むものはちゃんと実現するのだ。

3日前、我が漁村からビーチリゾートタウン、プエルトバヤルタに移動。(Vallartaの発音はバヤルタとバジャルタの中間なので、バジャルタと表記される場合もある。)一等長距離バスだと4時間くらいで行けちゃうし、なかなか快適だ。しかもローカルバスと値段の差はほとんどない!

「2時のに乗れば、6時ごろPVに到着するから、ビーチを散歩して~、オシャレなバーでマルガリータで乾杯して~、ちょっとナイスなレストランで夕食を・・・」なんてプランをたてていた。

しかし!当日バスターミナルに着いて始めてわかった。一等バスの出発時間は午前2時と4時だったのだ。
(そういえば、この時期、日中の長距離バスは乗ったことがなかった。たぶん、年明けからデータイムの便が開始されるのだろう。)

しかたなく、ローカルバスで北上することに。
ローカルバスといっても長距離なので大型のツアーバスっぽいのだが、トイレがついていない。ビッグドッグは大丈夫だろうか?(私は旅をしている時はラクダのように水分を溜めておけるが、BDは普通なみにトイレが必要だ。)せめて最前列の席を!と日本のラッシュアワーで鍛えられたおばさんぶりを発揮し、運転助手の荷物を勝手にどかしそそくさと座ってしまう私。(数年前「俺が荷物をみてるから、最前列をゲットしろ!」というBDの願いを無視したことがあったが、途中でゲロられてしまい、お互い辛い思いをした。)

「PV到着は遅れちゃうけど、しょうがないね」
今はいろんなことに対し執着が薄れているので、スケジュール変更くらい、どうでもいい。
しかし、数キロ町を出ると、運転手は退屈なのか眠たいのを我慢しているのか、携帯メールをやり始める。やめてくれよ。
「携帯メールこそ危険なのに」とBDもぼやく。
「終わったみたい。これで運転に集中してくれるといいんだけど」と言い終わらないうちに今度はゾウキンでダッシュを掃除し始める。それが終わると切符を数えたり、お札を整理したり。その都度、私はBDを突き、クスクス笑ってしまう。そして、その都度、運転速度が落ちる。
「今世紀中にPVに到着したいんだけど」クスクスクス。

サッカー映画が終わると(昔は大音量のカーステレオだったが、今はどの長距離バスもビデオやDVDが完備されている。トイレがなくても。)今度はスペイン語に吹き替えされたしゃべる動物のファンタジーだ。サッカー映画よりデカイ音だ。しかも、まだ旅の三分の一も通過していない。陽はどんどんと沈む。

そしてとうとう、海岸を走るハイウェイ、Mex200からバスは離れてしまうのだ。
「トマトラン12キロ、と看板があったけど、トマトランでUターンするのかなぁ」と私は心配だった。
「別のルートでPVまで行けるんだよ」こういう時、何故か楽観的になってしまうBD。

別のルートなんてありゃしない。トマトランの町でUターンするのだが、それだけではすまない。
客の乗り降りがないのにバスは30分も道ばたで待機している。やっと動き出すと、我々の前(要するにバスの入り口のところ)には運転手の妻と息子もいるのだ。
(「ね、気がついた?この運転手、しゃべると運転がえらく遅くなるんだけど」)数キロ走り、また停止する。今度は妻にお金を渡し、夕食を買わせにいかせている。(「なんでトマトランで30分も停止している時に買わなかったんだろうね」イライラがどんどん浮上してくるのだ。)

道ばたタコス屋台から戻った妻。持ってきた「夕食」に私は仰天!
彼女が抱えてきたのはラージサイズのスチロールカップ満タンのスープとカリカリのトスターダ。でも運転手はそれが欲しかったようだ。運転しながら丁寧にスプーンで味わっているのだ。ひとさじ、ひとさじ、こぼさないようにゆっくりと。そして運転も極端にスローダウン。

「時速35キロだよ!」もうがまんできないBDは(トイレなのか、速度なのか?たぶん両方だったのだろう)バスの中でぴょんぴょん跳ね回る。「歩いた方が速いよ!がぁぁぁぁ!もう、我慢できない!!!俺が運転変わってあげるよ!席でゆっくり心ゆくまでスープを飲んでくれ!!!んんんがぁぁ!ハイジャックしてやろうか?!」

わめくBDを運転手はちっとも気にしない。スープの最後のひとさじとトスダーダの最後のひとかけらを食べ終わり、ソーダも飲み干すと暗闇の中の小さな町で妻と息子を降ろす。外は真っ暗だ。で、ヘッドライトでもあまりよく前が見えなくなると?速度を恐ろしく上げるのだ。もちろん。

スペイン語でしゃべる動物の映画は終わったが、かわりに今度は爆音のエレクトロ・オペラだ。派手な衣装のグラマラスな女性が踊りながら甲高い声で叫んでいる。暗闇の中のクネクネ山道を暴走するには最高のBGMなのだろう。しかし、こんなスリルも運転手には退屈なのか、また携帯メールを始める!そして切符やお札の整理も!いつ崖から転落しても不思議ではない。

それでもPVに到着するのだ。ハレルーヤ!
バスから解放だ!生きているうちに!ハレルーヤ!
PVのホテルがちょっと高い?そんなのどうでもいいよ。

2 Comments:

Blogger ぬほりん said...

おもしろすぎます。ヽ( ̄▽ ̄)ノ

5:00 PM  
Blogger bad-dog said...

メヒコは笑いが充満している国ですね!

10:12 AM  

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