シェルター
チベットの難民救済に熱心な友人たち、中南米の貧しい地域で家の建築を手伝う友人、中年協力隊の一員としてナイジェリアで技術を教える友人などなど。なんだかとてもグラマラスで羨ましい。私も遠く、エキゾチックな地で人助けをしたい。普通、そうだよね。
ビッグドッグには“普通”がない。人類について話しているのを聞くと、なんて冷酷なヤツなんだろう、と思ってしまうこともある。
「人口が多すぎるから貧困があるんだ!人口を減らさないで、産児制限を語らないで貧困撲滅だと?バカげてる!」
「メキシコから来ようが、ミネソタから来ようが、どうでもいい。カリフォルニアは限界を超している!もう誰も来るな!」
「人間を救ってばかりいるから地球が滅びるんだ!」
動物保護、環境保護に熱心なビッグドッグにとって世界の悪はすべて人口増加が原因のようだ。
な!の!に!皆がもう呆れて、諦めてしまった友人たちには妙に優しい。道ばたで助けを求めるホームレス層にも。普通、誰もが遠ざかりたいような人たちはすすんで助ける。
というわけで、先週の月曜日、我々はサンルイス・オビスポの駅へ、ハーリーを迎えに行った。
ハーリーのことを簡単に説明すると:
*身長158、体重90の永久的独身男性。
*かっこ良く人気者のお兄さんがベトナム戦争へ送られた時、彼の愛車、55年型シボレーの鍵をハーリーに「俺が戻るまでかわいがってくれよ」といいながら渡すがお兄さんはベトナムから戻らない。そして車はそれから一度もドライブウェイから離れることはない。何十年も、お兄さんが別れた時と同じ場所に、同じ状態で置かれている。(そんな車だったが、今年の前半、お金がなくなり食べるものに困り、とうとう売ることになった。)
*お兄さんが亡くなってからはお母さんと二人暮らしだったが、そのお母さんも70年代後半に亡くなる。それからのハーリーの家はタイムカプセルのように止まってしまった。何も動いていない。モノは入るが、決して出て行かない。本や雑誌は「柱」としてどんどん延びる。家具は徐々に崩れていく。ホコリも溜まるだけだ。
*何かが壊れても直さない。まずトイレが漏れるようになり、使えなくなってしまう。(どうしていたのか、想像させないで!)今度は家の下で水漏れが発生し、家全体の水を止めなければならない。それも、そのままだ。(トイレも、風呂場もない!マジ、想像したくない!)
*数年前、クビになったが、かわりの職を探そうとしない。どんどん貯金はなくなる。車のローンが払えなく回収されてしまう。家の電気も止められ、暗闇の中での生活だ。昼間は図書館でホームレス層と遊んでいるようだ。
*現在の体重は55キロくらいに落ちている。ほとんど食べていないようだ。だけど家の中の本や雑誌やCDやアルバムの山を処分しようとしない。(「1冊1ドル、いや25セントで売ってもかなりの収入になると思うのに!」)
昔はクリスマスや感謝祭の時、ドッグファミリーは家族がいないハーリーも誘っていたが、トイレがなくなってからは誰も呼ばない。それどころか、避けてしまっている。そんなハーリーだが、ビッグドッグだけは何も変わらないように付き合っている。
「9月末から年金を貰えるからそれまでの我慢だ」と最後に会った時言っていたのでビッグドッグは牧場に誘った。
「迎えには行けないけど、いつでも牧場はウェルカムだよ」
ハーリーは別の友人からお金を借り、電車とバスを使ってサンルイスまでやってきた。
「さあ、持ってきた衣類、全部洗濯機の中に入れるんだ」ビッグドッグはむしり取るようにハーリーのバッグを取り上げた。「今着ているものもだ!臭すぎるよ。」
「本当?俺は幸い、鼻が鈍感なんだ」とハーリーは笑った。
幸い?誰にとって?
「そういうの、ありがたいことじゃないよ。」
「だからここにくる途中、話し相手、いなかったのかなぁ。」
私は洗濯部屋から逃げた。バッグから爆発する悪臭は魔物だったから。
ハーリーの衣類は3回も洗濯機を通った。トラックのシートカバーも。そしてビッグドッグは一生懸命、脱臭スプレーをトラック中シュッシュ、シュッシュまいた。
「まだ匂うね」4日後、トラックはまだハーリーの匂いがした。
「シートカバーも洗ったし、脱臭スプレーもしたし。もう何していいかわからないよ」ビッグドッグは途方に暮れていた。
毎日2回のシャワー、ちゃんと使えるトイレとオーガニックで新鮮な牧場の食べ物でハーリー自身の匂いは消えてきたが、友人や家族は今も何故ビッグドッグがハーリーを家に招いたか理解できないようだ。遠くから助けを求める者を救う方が簡単なのかもしれない。
予期しないところからまた修行の機会が与えられた。慈悲や思いやり、人間愛について考えさせられる機会が。
ハーリーの退屈な会話に付き合わされるのは辛いが、牧場ではダライラマのごとく受け入れるようにしている。
ビッグドッグには“普通”がない。人類について話しているのを聞くと、なんて冷酷なヤツなんだろう、と思ってしまうこともある。
「人口が多すぎるから貧困があるんだ!人口を減らさないで、産児制限を語らないで貧困撲滅だと?バカげてる!」
「メキシコから来ようが、ミネソタから来ようが、どうでもいい。カリフォルニアは限界を超している!もう誰も来るな!」
「人間を救ってばかりいるから地球が滅びるんだ!」
動物保護、環境保護に熱心なビッグドッグにとって世界の悪はすべて人口増加が原因のようだ。
な!の!に!皆がもう呆れて、諦めてしまった友人たちには妙に優しい。道ばたで助けを求めるホームレス層にも。普通、誰もが遠ざかりたいような人たちはすすんで助ける。
というわけで、先週の月曜日、我々はサンルイス・オビスポの駅へ、ハーリーを迎えに行った。
ハーリーのことを簡単に説明すると:
*身長158、体重90の永久的独身男性。
*かっこ良く人気者のお兄さんがベトナム戦争へ送られた時、彼の愛車、55年型シボレーの鍵をハーリーに「俺が戻るまでかわいがってくれよ」といいながら渡すがお兄さんはベトナムから戻らない。そして車はそれから一度もドライブウェイから離れることはない。何十年も、お兄さんが別れた時と同じ場所に、同じ状態で置かれている。(そんな車だったが、今年の前半、お金がなくなり食べるものに困り、とうとう売ることになった。)
*お兄さんが亡くなってからはお母さんと二人暮らしだったが、そのお母さんも70年代後半に亡くなる。それからのハーリーの家はタイムカプセルのように止まってしまった。何も動いていない。モノは入るが、決して出て行かない。本や雑誌は「柱」としてどんどん延びる。家具は徐々に崩れていく。ホコリも溜まるだけだ。
*何かが壊れても直さない。まずトイレが漏れるようになり、使えなくなってしまう。(どうしていたのか、想像させないで!)今度は家の下で水漏れが発生し、家全体の水を止めなければならない。それも、そのままだ。(トイレも、風呂場もない!マジ、想像したくない!)
*数年前、クビになったが、かわりの職を探そうとしない。どんどん貯金はなくなる。車のローンが払えなく回収されてしまう。家の電気も止められ、暗闇の中での生活だ。昼間は図書館でホームレス層と遊んでいるようだ。
*現在の体重は55キロくらいに落ちている。ほとんど食べていないようだ。だけど家の中の本や雑誌やCDやアルバムの山を処分しようとしない。(「1冊1ドル、いや25セントで売ってもかなりの収入になると思うのに!」)
昔はクリスマスや感謝祭の時、ドッグファミリーは家族がいないハーリーも誘っていたが、トイレがなくなってからは誰も呼ばない。それどころか、避けてしまっている。そんなハーリーだが、ビッグドッグだけは何も変わらないように付き合っている。
「9月末から年金を貰えるからそれまでの我慢だ」と最後に会った時言っていたのでビッグドッグは牧場に誘った。
「迎えには行けないけど、いつでも牧場はウェルカムだよ」
ハーリーは別の友人からお金を借り、電車とバスを使ってサンルイスまでやってきた。
「さあ、持ってきた衣類、全部洗濯機の中に入れるんだ」ビッグドッグはむしり取るようにハーリーのバッグを取り上げた。「今着ているものもだ!臭すぎるよ。」
「本当?俺は幸い、鼻が鈍感なんだ」とハーリーは笑った。
幸い?誰にとって?
「そういうの、ありがたいことじゃないよ。」
「だからここにくる途中、話し相手、いなかったのかなぁ。」
私は洗濯部屋から逃げた。バッグから爆発する悪臭は魔物だったから。
ハーリーの衣類は3回も洗濯機を通った。トラックのシートカバーも。そしてビッグドッグは一生懸命、脱臭スプレーをトラック中シュッシュ、シュッシュまいた。
「まだ匂うね」4日後、トラックはまだハーリーの匂いがした。
「シートカバーも洗ったし、脱臭スプレーもしたし。もう何していいかわからないよ」ビッグドッグは途方に暮れていた。
毎日2回のシャワー、ちゃんと使えるトイレとオーガニックで新鮮な牧場の食べ物でハーリー自身の匂いは消えてきたが、友人や家族は今も何故ビッグドッグがハーリーを家に招いたか理解できないようだ。遠くから助けを求める者を救う方が簡単なのかもしれない。
予期しないところからまた修行の機会が与えられた。慈悲や思いやり、人間愛について考えさせられる機会が。
ハーリーの退屈な会話に付き合わされるのは辛いが、牧場ではダライラマのごとく受け入れるようにしている。
2 Comments:
ハーリーのイメージとしては「真夜中のカウボーイ」のダスティン・ホフマンってとこかな? そろそろオイラも牧場に転がり込みたいぜ。
いつでもwelcome!!
でも、ちゃんと作業着持参でお願いしますね。
うふふ。
Post a Comment
<< Home