Thursday, February 21, 2013

良すぎる

 "Too much of a good thing."
イギリス人小説家、アルドス・ハクスリーはアンティグアの50キロほど西に位置するアティトラン湖のことをそう表現した。うんざりさせられるほど良い場所、って日本語的には妙な表現。 

いつ訪れたのかはわからないが、以降、大勢の人が訪れていて、この火山に囲まれた湖についてたくさん書かれている。何も新しいことを追加できないが、ここに来てみて初めてハクスリーがいうことが理解できた。 

「ミス・テルアビブがいくって!しかも知り合った男の車で!」ビッグドッグは興奮ぎみにいう。ミス・テルアビブは泊まっているホステルで知り合ったイスラエル人女性につけたニックネーム。観光客用のシャトルバンで移動したくなかった我々はチキンバスを利用するかどうか悩んでいた。ミス・テルアビブのお知り合いの車に便乗できないものだろうか? 

幸い、ルイスはフレンドリーで人懐っこいグアテマラ人。すぐにオーケーしてくれた。

 湖に到着した時は曇り空で靄っていた。どこがそんなにスゴイんだろう?よくわからなかった。畔の町、パナハチェルは観光メッカだ。メインストリートはお土産屋が連なっている。有名なテキスタイルからそれらで作られたグッズ、観光客しか着ないようなTシャツ、スーベニアなどなどが並んでいる。

外人向けのレストランも豊富だ。 外人で賑わうガーデンカフェでランチを食べた後、モーターポートで反対側のサンペドロ・デ・ラ・ラグーナへ。ここはヒッピーバックパッカーの中心地だ。

普段は外人が集まる場所を避けるようにしている我々だが、今回はなかなか避けられない。でも、若い旅人と一緒、というのも楽しい。70年代中南米をバックパックで回ったというと若者たちは畏敬と尊敬の眼差しで彼の話に夢中になり、ビッグドッグはちょっといい気分。彼の家族の無関心とは大違いだ。 
ホステル・ズーラのラウンジ
なんだかバリ島のクタを思い出す
サンペドロは近くのサンティアゴ・アティトランやサンホアンなどの村を探検するのにもいいベース地点だが、サンペドロを離れようとすると何故か誰かと会話にはまり、なかなか移動できない。数日たってやっとお隣のサンホアンの機織工房(全て女性たちが運営している組合だ)を見に行ったり、ボートに乗りニューエイジビレッジのサンマルコまで行ったみた。

サンマルコは小さな静かな村だが、スピリチュアリティのマーケティングが苦手な私には不向きだ。なんだか恥ずかしくなってしまう。そしてビッグドッグは「金払ってこのピラミイド型のキャビンに泊まるなんて。実際のグレートピラミッドの中で一泊した俺にはできないな。」

 でも、湖の本当の魅力は荒れる水面の上をガンガン走るモーターボートでお尻がミンチにされた後、パナハチェルに戻ってわかった。

 晴れの時は言葉を絶するほど美しい。頭が爆発しそうに美しい。そして、この絶妙の景色はパナハチェル側からじゃないと体験できない。 

いくつもの小さい緑のパーフェクトな形の火山に囲まれた湖。どの火山もミニチュア富士山だ。これは日本人にも魅力的。(だからか、たくさんの日本人バックパッカーも見かける。) 

ハクスリーの「良すぎる」コメントが理解できた。美しすぎて頭がおかしくなりそうだ。いや、実際におかしくなってしまった人もいる。サンペドロのホステルで夜中じゅうわめいていたドラッギーな若者。サンマルコの村はずれで泥酔している男たち。(村のスピリチュアルクレンジングはどうやら地元人には効かないようだ!)湖の畔で地元の警官たちと睨めっこしていた頭のヘンな外人。道ばたに座り、自分の拳で自分の頭をガンガン叩き、叫んでいたグアテマラ人男性。同情するしかない。アティトラン湖の美しさにやられてしまったのだろう。

 トニー・ベネットの I Left My Heart in San Francisco ならぬ、I left my mind in Lake Atitlan...



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