Friday, August 04, 2006

エルビスのギター


ビデオ撮影が終わり、今日はスチルの撮影のはずだったが、監督が肺炎(?)で入院し、渡米できなかったため、スチル撮影の仕事はなくなった。1日早く、アラバマからミシシッピーへ向かうことに。

まずはミシシッピーの北東にあるトゥペロへ。私の大好きなヴァン・モリソンの曲も「トゥベロハニー」だが、トゥペロといえばプレスリー生まれの地。途中で小さな道ばたのダイナーでランチをとりながら(アメリカの食事の料が巨大なのは有名だが、何故か、南部のこのような場所では普通サイズなのが驚き)美しい田舎道を走り、まだ午後の陽も高い時間にトゥペロに着く。プレスリーの生家というのがあるのだが、観光スポットなので見逃せないようになっている。

今ではこの地域は「プレスリーハイツ」と呼ばれている普通の住宅街だが、昔は貧しい人たちが住む「線路の向こう側」だった。プレスリーの家は小さな二部屋しかない家で、ほとんどそのままの状態で保存されている。(エアコンは観光スポットになってから設置された。)6ー8畳くらいの部屋が二つだけ。一つはベッドルーム、もう一つはキッチンだ。プレスリーのお父さんは$180を借金して自分の手で建てたとか。でもローンを返済できず、とうとうエルビスが3歳の時にプレスリー家はこの家を出て(銀行に没収されてしまったのだろう)祖母の家に移り、13歳の時に家族は仕事を求め、メンフィスまで引っ越したのだ。

この家、そして対照的に豪華な(というかケバイというか)グレースランドを訪問するとプレスリーの始まりと終わりが伺えるはずだ。そして、この両極端の間にエルビス・プレスリーという男、伝説、アイコンがいるのだ。

トゥペロに来ると、エルビス縁りの場所がいろいろあるのだが、あまり商業的になっていないのがナイス。「エルビスまんじゅう」まではいかなくてもエルビス関連のお土産屋がたくさんあってもおかしくないが、そういうのは生家の裏にあるプレスリーミュージアムのギフトショップのみだった。たとえば、生家の近くにあるジョニーズ・ドライブインは若きエルビスが友達と集っていたバーガー屋で「このブースでいつもエルビスはドーバーガー(ひき肉に小麦粉の「つなぎ」を混ぜたバーガー)を食べていたのよ」と教えてくれるウェイトレスがいたり、エルビスの写真が壁に掛かっているが、エルビス・テーマ・レストランからはほど遠い。エルビス・バーガーもなければ、BGMもない。

線路を超え、メインストリートに来ると、トゥペロ・ハードウェア・カンパニーという金物屋がある。ここでエルビスは11歳の時にお母さんに最初のギターを買ってもらったとか。毎日訪れる観光客に年配の店員、ハワードが丁寧に当時のことを教えてくれる。
「11歳の誕生日プレゼントとしてお母さんはエルビスに自転車を買ってあげようとこの店に連れてきたんだが、このカンターまで来ると、22口径のライフルが目に付き、それをお母さんに強請ったんだ。反対したお母さんにダダをこねていた時、店長がそれじゃあ、ギターはどうかね、とここにあったギターを指した。エルビスはギターを触ってみた。で、お母さんが、どうする?ギターにする?と尋ねると、彼は素直にイエス、マム、と答えたんだ」

この店はちゃんとした金物屋でハンマーや釘なども買えるが、今でもギターを売っている。そりゃ、そうだろう。「エルビスが最初のギターを買った同じ店で私も!」という観光客はけっこういるからね。
「有名ミュージシャンもそうだよ。前にエアロスミスのジョー・ペリーが来て、このサンバースト型ギターを買っていった」とハワード店員は教えてくれた。

でも、ひねくれ者の私だったら「エルビスが最初にギターを買った金物屋でこのスパナーを買ったの!」と自慢したい。

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