Saturday, August 05, 2006

もう一人のキング

ルイジアナからミシシッピー、そしてテネシーまで流れる道で、大昔はネイティブアメリカンの細道だったナチェス・トレイスは公園のようにキレイなハイウェイだ。何がいいというと看板など一切ないこと。ヘンなショッピングセンターもなければ、アミューズメントスポットもない。さすがに(バイブルベルトと呼ばれるだけあって)教会は多いが、その他はほとんど自然だけ。トゥペロ郊外からこのパークウェイに入り、開拓時代の面影を残すフレンチキャンプまで走り、そこから今度はミシシッピー川を目がけてハイウェイ82を西へ行くとだんだんと標高も下がり、巨大なミシシッピーデルタへ。

そう。ここがデルタブルース生まれの地だ。広大なコットン農場で働きながら、奴隷たちはブルースを歌っていた。仕事を探しに北上しながら、この音楽はデルタを脱出、シカゴブルーズに変わったり、何世代も後にブリティッシュブルーズになったり。世界へ広まっていくのだ。

ブルース好きな私には魔法の地だ。静かな4つ角を通ると「ここでロバート・ジョンソンは悪魔に魂を売ったのだろうか?」なんて想像したり。急いで通り抜けてしまうと、どの街もホコリっぽい寂れた街だが、ハイウェイから一歩入ると、どこもブルースの聖地なのだ!

Big Dogの親戚が住むインディアノラはなんとBBキングの故郷!ハイウェイ沿いにはそう記されている看板だけが唯一のヒントだが、一本なかの道に入るとBBが小銭稼ぎのためにギターを弾いていたという町角や青年の時に働いていたコットンジン(綿繰り工場)がある。(工場はもうないが、跡地をBBキングミュージアムにしようとしている。)一番の感動はBBが初めてプロとして演奏したというクラブ・エボニー。

インディアノラにはジュークジョイントというクラブが今も沢山残っている。(映画「カラーパープル」を見ている人はジュークジョイントがどんな雰囲気の場所かわかると思うが、昔は違法で運営されていた黒人向けの酒場だ。)クラブ・エボニーも極最近までは「飲む、うつ、買う」ヤバい場所だったが、大物ブルーズマンたちを迎えていることでは超有名。

年齢不詳のタフな黒人女性、メリー・シェパードは33年前にこの店を買い、今もオーナーとして毎日お店にいる。「ブルースの大物はみんなここでプレーしているわ。だから、今もミュージシャンの間では有名だし、みんなこのステージに立ちたがるのよ」と笑いながら言う。

「リアル」なものがどんどん消えていく現在では貴重な貴重な存在のクラブだ。

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