Friday, October 24, 2008

野生王国

「ねえ、薔薇が・・・!」
「薔薇がどうした?」
「一つも残っていないけど、どうしたんだろう?」
「知らないよ。昨日、窓を洗うとき邪魔だったから切ったんじゃない?」
「切らないよ~」

朝、コーヒーを飲みながら、東の窓を見ると、その外で咲き乱れていた薔薇の花が一つもない。うっっそ~。庭に出てみると、見事に花だけが消えている。枯れた花を切りとった後は地面が花びらだらけだが、その日は花びらすらなかった。

「どうしたんだろう?不思議だと思わない?」
私は一日中ビッグドッグに繰り返し訊く。何度も何度も。とにかく、しつこく。終いには、
「だ・か・ら!知らないってば~!どうでもいいだろ!もう、訊かないでくれよ。わからないんだから!」と怒られてしまう。
それでも、やめられない。私には「消滅された薔薇の謎」は一大ミステリーなのだ。
「どうしたんだろう・・・」

夜になってやっと閃いた。
「あ!鹿に食べられてしまったんだ!」

「鹿じゃないと思うよ。」
せっかく謎が溶けたと思ったのに、BDは納得してくれない。
「じゃ、なんなのよ。」
「わからないけど、鹿じゃないと思う。」
「別の説を提供しないで私のを否定するの?」
たかが薔薇。たかが鹿。なのに妙にムカつく私。

幸い、翌日、犯行現場を目撃できたので「ほら!やっぱり鹿だったじゃない!」とまた満足感が幼稚な私のもとに戻ってきた。
そして、鹿を閉め出すディアフェンスを2-3日で修復。

今は南側の丘の薔薇の花もちゃんと奇麗に咲いている。「今年は花が咲かないね」と思っていたら、こっちも鹿姉妹(親子かな?)の犠牲になっていたのだ。

ディアフェンスは家の周りを囲っているのだが、車が入る北側のメインの入り口は今まで通り自由に出入りできる。ここからバンビたちは簡単に入ってこれるのだが、どうやら彼女たちには面倒すぎるようだ。

Friday, October 17, 2008

バッド・ブロッガー

1ヶ月ぶりの更新だい。何度もここに来ては「な~~~んだ、全然更新されていないじゃん」と呆れて帰っても今日、またチャックしてくれたアナタに感謝!
ま、言い訳はいろいろあるのだが・・・
1)先月後半、珍しく長く落ち込んでいた。何故か。自分の人生のチョイスなどを見直し、自己嫌悪に陥ったりしたが、最後には一晩トイレの前で悪いエネルギーを一気に吐き出し精神的にデトックス。
しかし、
2)それから2-3日後、ラップトップが死んでしまった。ダークな内容の文章にやられてしまったのかもしれない。去年、コスタリカで盗まれてしまった元のラップトップは逞しいチタンのパワーブックで一度も故障したことがなかったのだが、新しいマックブックはもっとデリケートなのだろうか?結局はハードドライブそのものが死んでしまい、まったく新しいドライブと交換することになってしまった。もちろん、元のデータも全部消えたままだ。だが、去年の盗難以来、わりとマメにデータをバックアップしていたので、1週間分のデータしか失っていない。そう、あのダークな時期のデータだ。偶然とは思えない。で、
3)ラップトップが再生したら、今度は牧場を離れ北カリフォルニア、アケータへ。ビッグドッグの家の冬仕込みや庭の手入れをやりに行ったのだが、家は3人の大学院生に貸しているため、我々はバケーション中の友人の家で猫シッターを。(下記のエントリー参照)

昨夜牧場に戻ったが、もうカウントダウンモードに入っている。エデンの季節もあと1週間半。南へ旅立つ前にやることは山ほどある。でも、今日はスローデー。太陽はまだ夏だと思い込んでいるようだが、木々の色は少し変わってきているし、周りの農場はパンプキンでオレンジ色に染まっている。空は秋のブルーだし、空気も水も美味しい。ゆっくり、じっくり自然の美を堪能したい。

Monday, October 13, 2008

キティちゃん

ビッグドッグは猫があまり好きではない。たぶん、命令を従わないからだろう。でも、悪い犬は実はいい猫。そんな猫、私は好きだ。そして、猫も私が好きみたい。

昨年の秋、アケータに来た時は隣町、ユリーカの安モーテルにステイしていたのだが、今年は友人カップルが秋のヨセミテ国立公園へ行っている間、彼らの家で猫の子守り、キャットシッティングをすることに。猫はどうでもいいけど、彼らの5.1サラウンドHDTVに惹かれたビッグドッグはルンルン。

土曜日の午後、中間のサンフランシスコで彼らと合流。ベトナム人街の中では少々不思議な南国アイランド風のバーで地ビールを飲みながら家の鍵や猫マニュアルの受け渡しが行われた。カリフォルニアの秋はインディアンサマーと呼ばれ、夏日がいきなりやってくる。その日もサンフランシスコの有名な霧は遠く海の向こうで待機。まぶしい日差しが街を輝かせ、バーの暗闇の中にまで忍び込んでいた。

「スパズは自分のトイレを使わないけど心配しなくても大丈夫。彼女のウンチはカラカラ、炭の固まりみたいだから」と忠告してくれるアービー。
「で、テンカンを起こすとお漏らししちゃうけど、慣れているから大丈夫」フェザーも付け加える。

だ、だいじょうぶ?私、大丈夫じゃないかも。なんて思いながら、彼らが作成した猫マニュアルに目を通した。スパズは生まれつきテンカン持ちで毎日2錠の薬が必要だ。ハフィーはシャイだけど慣れると人なつこい。ボッシーは凶暴。キラーとプリンセスは近所のシャム猫たちだけど、いつも彼らの家に来ている。などなど、それぞれの猫の性格、好み、習慣などが獣医などのコンタクトと共に書かれていた。

私の不安な表情を受けてか、フェザーは「薬は毎日のことだから、彼女も慣れているわ。口の脇を軽く叩いて、口を開けたら薬を入れるだけ。スパズはとてもメローよ」と教えてくれた。
「そりゃそうだろ。毎日2錠もフェノバルビトールを摂っていればいつもラリラリだろうよ」とビッグドッグは笑った。「大丈夫だよ。俺、高校の時、獣医のアシスタントとして働いていたから。」

ーーー

「スパズちゃんの薬の時間だよ。」
「君やれよ。」
「えええ?獣医で働いていたの、私じゃないよ!自分以外の誰かに薬を与えたことすらないし。アンタでしょ、慣れ慣れなのは?」
「あれは薬に慣れていない猫だったから、無理矢理口をこじ開けて鉛筆の後ろの消しゴムで押し込んだんよ。」
それはメローなスパズには惨すぎる。
「スパズちゃん、薬の時間よ〜〜」猫なで声ってよく言ったものだ。
スパズは大きな目で私をじっと見つめるだけだった。

最初は優しくやろうとした。フェザーが教えてくれたように。
口の脇をトントンしながら「さあ、お口を開けて〜〜〜」と。
「そうそう。もうちょっと大きく。はい。お薬よ〜〜。ほら。ちゃんと飲み込んで・・・ダメ!出しちゃダメよ〜」
錠剤をやっとこさ口に入れるとすぐに押し出してしまうスパズ。出てくるたびに錠剤は唾液で柔らかくなっている。
そして、入れるたびに私は乱暴に。最後にはグチャグチャの錠剤を口の中に押し込み、口を押えた。すぐに溶けてしまったのか、何も押し出すものがない。

スパズ以外の猫は日中は外だが、「夜は家の中にいるようにして」というのがフェザーの希望。しかし、もう夜9時なのに家の中にいるのはスパズだけだ。
「ボッシーは見かけたけど今はどこにいるのかわからないし、ハフィーはまだ目撃さえしていないよ。どうしよう?」
「シッ」テレビの政治座談会に夢中だったビッグドッグは私を黙らせた。猫のことなんてどうでもいい。猫グッズだらけ、猫寺のような家にいるのがとてもミスマッチだった。
でも、猫が支配する、決して清潔とはいえないこの家。私には妙に心地よかった。バッドドッグではなく、グッドキティなのかもしれない。