Friday, October 30, 2009

春がき〜た

カリフォルニアの季節はファジーで曖昧。真冬でも夏日のような時もあれば、凍えそうな夏だってある。でも、こりゃ何だ?嵐のあと、我が谷に春がまたやってくるなんて、クレージーすぎる。

アイリスは咲くわ、スイセンも顔を出し始めているわ、山々はまた鮮やかなネオングリーンに染まってくるわ。同時に果樹たちは紅葉し始めているし、農場はパンプキンでオレンジ色。ああ、もっともっとこの狂った季節を楽しみたいのに、、、今日、牧場とお別れだ。でも今年は恒例の越冬旅行はドッグ・ファミリーの事情でしばし延期なので長くは離れていないはずだ。戻る頃には何の季節になっているのだろう。

Saturday, October 17, 2009

ボブキャットのトニー

嵐も去り、我々の谷は猛暑の中だ。

「お、見ろよ!」
ビッグドッグが小声で呼ぶので手にしていたペンキブラシを下し、キッチンの窓までいくとすぐ外にはゴージャスなボブキャットが!山猫の中ではかなり小型なボブキャットは巨大な家猫くらいのサイズだが、普通の猫にはない何とも言えない雰囲気がある。

家の中から彼女を追い、写真を取ろうとする我々。彼女は時々見上げ、窓の方を見るのだが、あまり気にならないようだ。こっちも勇気づけられ、外に出る。


「あ、ニワトリの方を眺めているよ。」

ビッグドッグは箒の長柄を片手に近づく。今まで足音を気にしなかったボブキャットだが、長柄のせいか、とうとう彼女はUターン。それも「チッ、せっかく美味しいディナーを、と思っていたのに」という感じに、ゆっくりと。元のルートを辿り、ディアフェンスの下をするするっと潜り、山の方へ向かった。

「何、その柄で私を守るつもりだったの?」私はビッグドッグの箒の長柄を見て笑った。
「お前こそ何考えていたんだよ!裸足で山猫を追うなんてアホだよ。」

確かに。トニー(と勝手に名付けている)は一見とてもとてもキュートだ。柴犬サイズの猫って感じで「おいで」コールを送ればすぐにやってきて撫でられそうな雰囲気だ。よく「ボブキャットに襲われた女性」などのニュースがあるが、わかる気がする。勿論、おいでコールなんて送っていないし、距離はおいてたと思うが、それでも撫でたい、遊びたい気持ちは否定できない。



余談:ボブキャットと普通の猫とのサイズの違いはさほどではないが、「ワイルド」には飼いならされた動物にはない「何か」がある。聖なる自然により近いからなのだろうか。同じように、野菜などもワイルドなものは栽培されたのより味も強ければ灰汁も強い。初夏のワイルドアーティチョークを茹でた後の水はビビッドなブルーグリーン。小さいが、とても香ばしい。先日、ビッグドッグは(知らずに)私のごぼうの葉っぱを全部刈り取ってしまったので、慌てて掘り上げきんぴらゴボウにしたが、これも強力。オナラの匂いは前代未聞だ。

これが問題のゴボウ。妙にエロチック。

Wednesday, October 14, 2009

嵐の後

「今日はスペシャルな音楽を楽しみたい」だと?まったく、何を考えていたんだろう。あまりにも甘い自分を笑うしかない。
自然はそんな甘くないぞ。特に牧場のような場所では。

「スペシャルな音楽」はデス・メタル化し、我々は自然の巨大なギャグのネタにされてしまった。

「あの水の音は?」外からではないような、、、

まさか、、、

うっそ〜。


東側の高い窓の内側はなんと素敵な室内ウォーターフォールになっているではないか。窓の枠の上から漏れている。
タオルを置いてもすぐに水浸し。バケツを置けるような状況ではない。
「ネットで水の中でも使えるコーキング材があるか調べろ!」とビッグドッグがいうのでオフィスへ走るが、20世紀なみのダイアルアップでは何も調べられない。近所のハードウェア店に電話しても「タール以外、考えられないな」と言われ、二人で嵐の中、ホームデポ(大型DIY店)まで行ってみることにした。

普段は西からの風が強いロスオソス・バレー。昨日は東からがんがん吹いていた。海よりに傾いていた木々も久々に逆方向に押され、気持ちよかったのかも。

ホームデポにも(タール以外!)濡れている場所で使えるコーキング材なんて売っていなかったが、「完全に乾いてから使用」と書いていないモノを探し、牧場へ。帰り道、山の方に入ったところで倒れた木が車線を塞いでいる。山から落ちた岩も障害物となっている。

「ペリーグロ!デルンベス!」道路標識スパニッシュのみ達者になってしまった私は叫ぶ。

どうやって水漏れを塞いだのか、よくわからないが、嵐の中、オンボロの脚立を立て「この上には立たないでください」の注意書きを無視し窓の周りのひびを不思議なコーキング材で埋めた。やはり水分が多いと使えないらしく、私はグネグネしたジェル状のものをただ夢中で押し込んだ。幸い、室内滝は止まり、それに励まされ、今度は少しだけ漏れている寝室の窓を。

「牧場にいる時でよかったね。」
ビッグドッグは暖炉を点したので家の中はポカポカ、心地よい。
しかし、ほっと一息、、、という訳にはいかなかった。またまた水漏れ発見。今度はバスルームから外へ行くドアのところだ。

私はコンビニの安いビニールレインコートを羽織り、また外へ。(昔、フジロック・フェスティバルで買った二つのビニールコートのうちの一つだ。最初のは取材後、シンガーのライアン・アダムスにより可愛い手書きイラストが描かれ、2度と着れない。)でも、どういう訳か、今度はまったくダメだ。どんなにコーキング材を使っても水漏れは止まらない。仕方なくビニールシートをドアで挟み、その下にポリバケツを置くしかない。

「もう4インチだ!」果樹園の脇にある雨量計を注目していたビッグドッグは数時間おきに雨量を報告する。

夜になるともう雨量計も満タンだ。最終的に、我々のエリアは7インチ以上の雨量だったらしい。24時間以内で18センチくらいというのはかなりスゴい。

都会と違い、田舎の嵐はダイナミックだ。
「なんだかエキサイティングな1日だったね!」と寝ようとすると電話が鳴る。

「住人のジョンだけど、1階の外が洪水になっていてもう少しでドアのところに来ちゃう!」

真夜中で何も見えない。雨はまだがんがん降っている。どうしようもないので水を掃き出すため、幅の広いブラシを彼らに渡し、それ以上水位が上がらないことを祈るしかなかった。普段から不眠症の我々。これほどの騒ぎの後、眠れるはずがない、、、と思いきや、疲れていたのか、雨音の魔法にかかったのか、いつの間にか深い眠りについていた。

ほぼ6時間後、またまた電話が。隣の植木問屋のデビッドだった。
「道に車が止まっていて、道を塞いでいるんだけど、誰のかわかる?トラックが通れないんだけど。」
オークハウスのマッケイン・パパの愛車だったようだ。小川を渡ったところでエンストしてしまったらしい。


死んだ車はもうない。あちこちの木や枝も。
嵐の前は乾涸びていた小川はまだ激しく流れている。「凄いだろ!激流だぜ!」と自慢げに海の方へ走っている感じだ。

まだ雨はしとしと降っているが風はなくなり、穏やかが戻ってきた。

Tuesday, October 13, 2009

初嵐

トイレを流す音に起こされた。でもビッグドッグは珍しく静かに、動かず寝ている。トイレ?誰?
起き上がるとわかる。水道の音ではなく、ざぁざぁ降る豪雨のサウンドだと。

季節初の嵐だ。

北東からくる時速75キロの強風はすでに菊たちを倒している。リンゴと梨の何割が生き残れるだろうか。枝などは大丈夫だろうか。急にやってきた大量のトマトは明日まだ蔓に付いているだろうか。建物はどのくらいのダメージを受けるだろうか。大掛かりな後始末が待っているのだろうか。

後始末のことは後で考えよう。今日はスペシャルな音楽を楽しみたい。風と水の牧場コンチェルトだ。

Saturday, October 03, 2009

中秋の名月

「秋がやってきたね。」
新しい季節の風が先日、我が谷を吹き通った。キリリとしたくなるようなパリっとした風だ。
ああ、秋だね。寒さも短い日照時間も苦手なビッグドッグと私はちょっぴりダウナー気味になってしまう。
「この地域は10月が一番暑いとトムが言っていたけど、あれは何だったんだろう。」

次の日からは地元の友人トムがいう通りの暑い暑い日が続いたが、暑くてももう夏の暑さではない。ロス・オソス・バレーの農場はパンプキンでオレンジの水玉模様。グリーンピースやズッキーニやペッパーなどなども見事に実っている。我々の野菜畑もジューシーで甘いトマト、いろいろな菜っ葉類、キュウリなどが美味しい。ジョンとローズの巨大な野菜畑はお化けのような巨大カボチャやスパゲッティ・スクワッシュでいっぱいだ。どうするんだろう。あんなに食べられないのに。別の使い道があるのだろうか?

アリやハチは毎日忙しく働いている。鹿たちも頻繁に見かけるようになったし、先日、ニワトリ1羽がキツネにやられてしまった。(一番シャイでつつき順位がボトムのニワトリだ。)みな牧場の収穫を堪能しているようだ。今夜のおかずは、、、やっぱりニール・ヤングの「ハーベスト」かしら。