Tuesday, January 29, 2013

恋はあせらず

ザ・スプリームズの名曲のようにガーデニングもあせっちゃダメ。

2010年に安売りしていた月下香というステキな日本語の名前を持っているチューベローズの球根を買った。鉢植えして、大事に大事にしていたのだが、土からは何もでてこない。まったく。葉っぱも何も。

「いつもケチばるからいけないんだ」と反省する私。その年は苗も「安いから」とホームデポから数個買ったが、どんなに安くても数週間で死んじゃったらちっとも安くなんかない。ということで、それからは少々高くてもちゃんとした苗や種を買うようにしている。

もう死んでいるのかも、と思いながらもそのまま温室に置いといたチューベローズ。すると、なんと、去年の春から葉っぱは出るわ、そして夏になると香高々な花も!うっとりするような南国の香。チューベローズとプルメリアの香バトルが展開。ああ、見捨てないでよかった。

そして、また今、あのモータウンクラシックが頭の中でループしている。


2年間育てていたアスパラガスの最初の芽がデビュー!

種から育てようとするとこのくらい時間がかかるそうなので、オンタイムなんだろうが、この時間の感覚は現代社会のものじゃないよね。

さあ、これからどんどん芽が登場するのだろうか?それとも今年はこの1本で終わりなのだろうか?自然もあせらず、なので、ジッと待つしかない。待つことに慣れてきた私は恋の達人にもなれるかも、、、なんて思ったりはしない。やっぱりアスパラガスと恋は別物だからね。

Monday, January 21, 2013

マーティン・ルーサー・キング・デーと銃

今週末は3連休。マーティン・ルーサー・キング・デーなのだ。公民権運動のヒーローを讃えるホリデーっていいじゃない!他にあるかしら、平等と人権のために戦ったリーダーの誕生日がオフィシャルな休日になっている国。素晴らしい人物のための素晴らしいお休み。こういう時、ああ、アメリカっていいな、と心から思えるし、アメリカ人だったら鼻高々だと思う。

そんなことを考えながら家の脇のガーデンで庭仕事をしていた。1月とは思えない暖かさで小鳥たちもぴょんぴょん、ぴよぴよ。自然の静けさと彼らのさえずりを楽しんでいると、、、

バン!!バン!!バン!!

銃撃の音だ。ボーイズ、またやっているね。丘の上からスキート射撃。

去年のテナント交代劇で牧場のテストステロン量が増えただけでなく、銃の数も増えた。大量に。

前から住んでいるJDもガンマニア・ガイだ。実は私の銃初体験も彼のコロラドの家を訪れた時だった。(コロラドで銃といえば、コロンバインの悲劇がありますね。)ビデオ取材の仕事が終わり、彼の家で打ち上げが行われたのだが、なぜかホットドッグやビールと共に銃もたくさんあった。

「BYOガンだったの?」と笑った。JDと当時のワイフも骨董品のライフルからハンドガン、いろいろ持っていたが、来る客もみなお気に入りの銃持参でやってきた。そしてパーティが盛り上がると、射撃大会が始まった。壊れたコーヒーメーカー、空き缶、箱、、、ターゲットにできるものが次々とガレージから登場。赤ちゃん人形はブラックすぎて恐かったけど、もっと恐かったのはアルコールと銃のコンビネーション。

そしてついにタネライトが持ち出された。

タネライトは特殊な爆薬だ。安定しているのでJDが嬉しそうにいうように「叩いても、飛ばしても爆発しないから郵送もできちゃうんだ。でも、ある口径以上の銃で撃つと、、、ドッカーン!」

「何を爆破しようか?」
「あの木がいいよ。死んじゃったので切り倒さないといけないと思っていたから丁度いい」
JDの指示で友人はチューブ状のタネライトを木に巻き付けた。そして、家のデッキからみんなでバンバン。あっという間に誰かが命中し、ロッキー山脈の広大な谷間に爆音が響き渡った。

幸い、牧場では控えめのJDだが、去年の夏から住んでいるハガティ兄弟もガンマニア。愛好家同士で射撃熱が煽られている。ハガティ兄弟と仲良くなったJDは彼らのことをタリバン兄弟と呼ぶようになり、ライフル、ピストル、半自動式ライフルなど自慢しあい、ビッグドッグやもう一組の住人のフィルも巻き込んでいる。

不安だ。銃が好きなアメリカ人は(大嫌い、という人も大勢いるが)銃があるから安心できると思っている。制御されたら「悪い奴らしか銃が持てなくなる。そうなったらどうやって自分や自分の家族を守るんだ!」と主張する。だが、私はアクシデントの方が多いのを知っているので、最近はキノコ狩りで森に入る時もリスクを感じてしまう。

アメリカの田舎だからしょうがないし、ビッグドッグは特に気にしていないようだから私も黙っている。今のところクレー射撃だったり、金属またはプラスチックの標的を撃つだけだし。鹿などは撃って欲しくない。

「フィルが買ってきたクレーピジョンは分解性で自然にかえるタイプだよ」というビッグドッグは私は安心させようとしているのだろうか。

今のところは我慢しているが正直な気持ち、半自動式の武器だけでもなくして欲しい。

パン!パン!パン!

小さな音はビッグドッグのライフルだ。お爺さんの時代から受け継がれたスリムな銃でボーイズの重装備に比べるとまるで豆鉄砲。

なんて奇妙な国なんだろう。マーティン・ルーサー・キング・デーという祝日がある一方、信じられないような武器も所持できる。弾丸によりあまりにも早くこの世を去ったヒーローの日とビールと射撃でわいわい騒ぐ男たちとのギャップの広さ。

しかし、このギャップは実にアメリカ的で、キング牧師を讃え、銃所持を受け入れるという矛盾もアメリカ的なのだ。自分の価値観や考えと正反対のことを受け入れられるからアメリカンドリームが実現できるのだと思う。私にとってのアメリカンドリームは経済的な成功とはまったく関係ない。意見や価値観、人種や性別や好みなどバラバラでも共存できる、というのがアメリカという社会実験の夢なのだ。もちろん、実際は摩擦もあり、共存も難しいのだが、国がこのような夢を持っていること自体が素晴らしい。

夕方、牧場の入り口近くに新しく植えた木を見にいく途中、JDに出会った。彼は数日前、落馬し、家でおとなしくしていた。

「射撃の音、聞こえていたよ」と嬉しそうにいうJD。「僕にとって子守唄のようだったよ。そう言えば、新しいライフル見せた?」

持ってきたライフルは戦場で使われそうな代物だ。特殊なつや消し加工やディテールだらけの半自動式。

「選挙の次の日、コロラドで買ったんだ。特注部分込みで1500ドルだったけど、数週間前、こっちのガンショップに持っていったら4000ドルで譲ってくれないか、とオーナーに聞かれちゃった。で、その時、ショップにいた別の客はその倍を出すって。わっはっは!」

新しい銃を見ると私は内心、身震いしてしまうが、表情は変わらず穏やか。私のかなりリベラルな価値観を受け入れて貰いたければ、JDのようなガンマニアも受け入れないと。心の中で正常とガンコントロールを願っていても。

Tuesday, January 15, 2013

食の政治学

大好きでよく引用する書物の一つにM.F.K.フィッシャー女史の「アート・オブ・イーティング(食の美学)」がある。現代ほど食文化の研究がポピュラーになる前に書かれたエッセー集で食の美学、哲学、心理学、人類学、ロマン、そして快楽など多方面から「食」を捉えている本だ。だが、この中には食の政治について何も書かれていなかったと思う。

彼女の時代はまだ食産業だけでなく、企業そのものが政治力が今ほどなかったのかもしれない。

現在は資本主義がエスカレートし、企業主義が世界を制覇してしまっている。企業、そして彼らが操る政治にあまりにも我々は支配されているように感じてしまう。

ドロップアウトしてから、こういうことをよく考えるようになった。昔、自分がメディアで働いていたころ、どれほど自分もスポンサーや株主たちに支配されていたかを思い出すとなんだか恐くなる。

ある同僚C氏といつも「私たちは売女だから」なんて笑いながらギャラのいい仕事はなんでも引き受けていた。別の同僚はこういう行動を軽蔑視し、「僕はジャーナリストだから」とCMの仕事は一切断っていた(が、彼も再婚すると何故かCMなどに堂々と出演するようになっていたのだ!)でも、私から見たら、彼も私たちもみんな売女。スポンサーのお金で運営しているメディアには自主性なんてないのだ。

今は違う。とても解放された気分だ。幸せの自主生活だからとても大事にしている。独立は勝ち取り、守るべきものだ。特に企業支配下の米国では。(日本は「世間」が市民の行動の範囲を決めている感じだが、「自由」を尊重するアメリカでは「自由」の妄想を壊してはならない。本当は企業が国を支配しているのだが、「企業を支持しないのは反アメリカ的だ」と思わせているところがある。)

食産業の政治的権力は特にすごいと思う。なんだかやりたい放題。消費者より利益を重視。オバマ政権でさえ、食産業やバイオテク産業からの天下りがウヨウヨいる。自分で自分たちを守るしかない。そんな中、何を買って、どこで食べて、何をどうやって作るかはかなり政治的意味を持つようになってしまった。

自分で野菜を育て、製品化されたものを買うのを控えることは微々たる抵抗かもしれないが、一口づつの抵抗だ。この国で参政権がない私が唯一できることなのかも。

マイノリティだとやることなすこと全てに政治的意味がある。東京在住のレズビアンカップルが教えてくれた。ヘテロの人たちにとって恋愛は単に恋愛だが、主流から逸れると、、、何もかも政治的になってしまう。デモに参加しなくても。抗議にいかなくても。ニューヨークタイムズに大きな広告を載せなくても。普通に暮らそうとするだけでも。

今年から本格的に始めたノンGMOプロジェクト。2週目の報告です。

失敗

まずは失敗を告白。

牧場に戻る途中、ガソリンスタンドのとなりのバーガーキングに入った。ビッグドッグは寄り道が嫌いだ。目的地到着までどこにも止まりたくない。ガソリンは必要だったが、そこからマトモな食事ができるところを探すなんてあり得ない。実に久しぶりのファーストフードだが、お店にはトイレもあるし、、、二人ともフィッシュバーガーを食べた。何が入っているのか、考えないように食べた。

ビッグドッグは大の甘党だ。私は甘いものはちょいと苦手だが市販のスゥイーツはヤバすぎるので頻繁にお菓子を作っている。ところが先日、うっかりネスレのホワイト・チョコチップスを買ってしまった。オーノー!原料の中の大豆レシチンは完全にGMOだ。

さらに、数回、友人たち(全てが肉食系アメリカ男性)を夕食に招いたが、彼らはいつも大量に生肉持参でやってくる。(私に任せるとベジタリアンディナーになってしまうのを恐れているのだろう。)私もソーセージ(げげげ)、チキン少々、ステーキ数口食べてしまった。チキンとビーフも怪しいが、ソーセージは怪しいを通り越して不気味。

意外と簡単

オーガニックやノンGMOの材料を入手するのは簡単。GMOは加工品、製品化された食材に一番多いので、そういうものを使わなければいいのだ。インスタント系などに慣れている人たちには面倒かもしれないが、GMO以前に添加物の安全性を信じちゃいけない。

"Firm"はかなり硬い
嬉しいことにアメリカでメジャーな豆腐メーカー、日本のハウス食品の普通の(要するにオーガニックではない)豆腐も遺伝子組み換えされていない大豆から作られている。やった~!
そういえば、去年、キッコーマンUSAに彼らのお醤油について問い合わせたなぁ。残念ながら彼らのオーガニックではないお醤油は遺伝子組み換えの大豆も含まれているそうだ。がっかり。

もう一つ嬉しいことは量り売りされているオーガニック食材が思ったより安いこと。やっぱり加工されるほど値段は上がるのね。

値段は1ポンドの価格
 「自然食品店って何もかも高い」と思いがちなビッグドッグだが、オーガニック大豆は1キロ4ドルくらい。オーガニックコーンミール(トウモロコシ粉)は1キロ3ドル以下。今のところGMOの大半はトウモロコシと大豆なので、この2品目はオーガニックにこだわりたい。








そして実に楽しい

戦う農婦。戦う消費者。戦う料理人。戦ってばかり、、、ではないのだ。牧場にいるだけで毎日が楽しい。まだいろんな野菜が収穫できる。リンゴも最後の1本にまだ美味しいのがたくさんあった。

今年お初見のキノコ
そして冬場はキノコの季節。どこを見ても美味しそうなのがニョキニョキ。もっと勉強したら食べられるキノコも増えるはず。

 森や林から食材を集めるのも楽しいが、自分で作るのは食の政治学の中で最大の抵抗行為。本当の意味の独立を求めるとなると全部自分で作るしかないと思う。 それは遠い夢のような話かもしれないが、この時期、どんどん送られてくる種のカタログを見ながら夢見る私だ。毎年、少しづつその夢に近づいているのが励み。

鮮やかなオレンジ色はヤバいかな?
取りあえず、今は芽キャベツ、菜っ葉類、サラダ系、ニンジン、ネギや温室のピーマンなどで十分ハッピーだ。その他はファーマーズマーケットで補充し、さらにハッピー。






左のチャードも、上のルッコラも雑草



Tuesday, January 01, 2013

巳は冬眠中

2013年。

まだ年賀状は手元にある。
巳はまだ冬眠中なのだ。

でも、今年はもう少し頻繁にブログしたいですね。

ケベックコーナー


先週、「浜辺」から「町」へ移動し、ドン・ベトのアパートへお引っ越し。

ドン・ベトのアパートの2階の窓にはカナダ、ケベック州の旗が掲げられている。カナダ人は実に自分たちの国旗が好きな国民だが、ケベック州の人たちはあの赤い紅葉ではなくフランス国家のシンボル、白百合の紋章をモチーフにした州旗を掲げる。

「ここはフランス語圏ですよ」という合図なのか警告なのか。

我々にはどうでもよかった。アパートはキレイで安かったのでビッグドッグも私もハッピー。それに高校で習った(そして忘れてしまった)フランス語を使うチャンスじゃない!

ケベック人たちには不思議だったのだろう。日本人とアメリカ人が何故ここにいるのだろう?日本人はある程度フランス語がしゃべれるみたいだけど文法はめちゃくちゃだし、こっちの言うことがほとんどわからないみたいだ。アメリカ人はどうして英語圏の人たちがいるところに行かないのだろう?

毎晩、彼らの話題の中心になっていたようだ。

「彼はジャパニーズレストランでウェイターやっているのよ!」
「Faire de garcon?! Hwa-hwa-hwa!」
「彼女、いくつだと思う?」
「40くらい?」

部分的に会話の内容をキャッチしながら、私は一人でニヤニヤ。
言葉がまったく通じないのは面白くないけど、中途半端にわかると、、、アドベンチャーになるのだ!