Friday, February 29, 2008

緯度19° 経度 104° のスティルライフ

何も書きたくない時もあるのだ。



Sunday, February 24, 2008

星劇場

数日前の月食に続き、土曜の夜は星劇場だった。

「もし、今夜、何も予定がなかったらイプノティザドールを見にいきません?」とゴローさんのとてもチャーミングな次女、チサちゃんから誘いの電話がかかってきた。
2月上旬から町の端、ハイウェイ沿いに大きなテントが設置されていて、サーカスかと思っていたら「催眠術ショーをやっているんだよ」とゴローさんに先週教えられたばかりだった。「今週末が最後だし。」

催眠術にかかったことはないが、大昔、ラジオで働いていたころ、催眠術をやるマジシャンを知っていた。彼はラジオスタッフの友人で、よく夜中にやってきて 深夜番組のスタッフや出演者を楽しませていた。そうしているうちにプロデューサーに気に入られ、知らない間に番組の出演者になっていた。だが、ある日、 ディレクター同士の結婚式に招待され、そこでも催眠術ショーを行ったのが最後。例のプロデューサーに催眠術をかけてしまったのだ。

「ペット・ショップ・ボーイズのゴーウェストを聞くと、無性にサッカーが観たくなる~」という暗示で、本当に曲が流れる度に「あ、サッカーの試合、観ない と!」と騒ぎだした。みんな大笑い。曲が止まると、暗示から解放されるのだが、何故みんなに笑われているのかわからない。これが延々と続くうちにそのプロ デューサーは妙なパラノイアを感じるようになってしまった。そして次の週、マジシャンは番組から降ろされていた。

メキシコ人の催眠術はもっと陽気で楽しいはず!ということで8時半にゴローさんの次女と三女、日本で庭師をやっていて冬の間はゴローさんのお店で働いてい る青年タケ君、そしてお店の従業員何人かと一緒に大きなテントに入った。中はガラガラ。ステージの真ん前に子供たちのグループが、そしてポツポツとカップ ルや家族連れが「コロナ」や「コカコーラ」のロゴのついた白いプラスチックの椅子を埋めているだけだ。
「最後だから、もうみんな観たんだよ」というビッグドッグだったが、チサちゃんは説明する。
「8時半から始まるはずなんだけど、メヒコは絶対に時間通りにいかないのよ」
地元の人たちはみんな知っているのか、9時半が近づくと、会場は満員だ。プラスチックの椅子も後ろのスタンド席も人でギッシリ。しかもメヒコ人のみ。外人は我々だけだった。

「まだ始まんないのかなぁ」と思っているといきなり左右のスピーカーからディスコビートの爆音が。メキシコ人にとって耳が痛くなるほどの大音量は「辛い」のではなく「楽しい」のだ。

学芸会のようなカーテンが開くとステージにはカウボーイ姿の男が二人。アコーディオンとギターと口パクでランチェーロ曲をコミカルに演じる。ギターのネッ クを股に突っ込んだり、オナラ・ギャグをやったり。まるでドリフの「8時だよ!全員集合!」のメキシコ版を見ているかのようだ。こういうお下品なギャグ。 欧米人には好まれないが、メキシコ人は日本人とユーモアの感性が似ているのか、大ウケだ。

闘牛士の衣装を着た奇麗な女性の口パク、田舎のカウボーイっぽい年配男性の口パク・・・歌、歌、歌が続く。なかなか催眠術が始まらない。パフォーマーが変 わる度にカーテンが閉まり、客はスナック売りのところに群がる。入場料は20ペソ(200円程度)だけど、ここで儲けているのね。

続いて登場したのは町の白人観光客カップル姿をおちょくるパフォーマンスだが演じているのは最初の二人だ。なるほど。外にある「星劇場」の看板には何組ものエストレーヤ(星)が描かれているが、実際は4人だけなのね。

ピエロ(最初の男性のうちの一人)の観客参加のわけのわからないコント(これは言葉の問題で私がわけがわからないだけだ。しかも、タケ君も参加させられ、わけのわからなさ加減で観客は大爆笑。)これが終了していよいよ催眠術ショーだ。

催眠術師はスーツを着た二人の男性(年配の人と最初の口パクコンビの一人)スピーカーからはカウントアップとカウントダウン、そして「眠くな~る」「体が ふわふわしてくる~」「気持ちよくなってきました~」の暗示がかなり長い間流れる。ステージの後ろに並んでいる赤いプラスチックの椅子に10人の参加者た ちが座っているのだが、客席を見回すと、暗示にかかってしまった客もあちこちで爆睡している。

ショーそのものは他の催眠術ショーと似ていて暗示にかかってしまった参加者たちは架空の楽器を演奏したり、「中国語」で会話したり(「おかしかったよね、 あれ。中国語っていうんだけど、みんなアリガトウみたいなことを言うの!」とチサちゃんは後でお父さんに説明)同性同士で踊ったり(「さあ、あなたは15 歳。今夜はスウィートフィフティーンのパーティです」)アイドル歌手になってしまったり。一番愉快だったのが、おデブちゃんのシャキーラ。ま、唯一知って いる歌手だからとびきり愉快だったのかもしれないが。

終演したのは深夜。
「ああ、楽しかった!誘ってくれて本当にありがとう!」
スペイン語がほとんど理解できない私にはわけのわからない部分が多かったが、それがまた楽しさを倍増してくれたのかも。グローバリゼーションの時代、メキシコならではの体験って実に貴重だ。さあ、次は仮面レスリングがこの町にやってきてくれたらなぁ。

Sunday, February 17, 2008

ボ〜〜〜ッ

我が漁村にはなんと一組の日本人家族も住んでいる。
4年前、最初に訪れた時に出会ったゴローさん一家。その時、ゴローさんは町の市場の中で食べ物屋をやっていた。フライ定食、照り焼き定食など、簡単なメ ニューが数種類あるだけだが、値段は他の市場の食べ物屋と匹敵していてとてもリーズナブル。地元のメキシコ人にも冬だけやってくる北米人にも人気だった。 翌年には市場からハイウェイ沿いに店を移動し、メニューもスペースも拡大。

今までは旅の拠点となっていたこの町だが、今回は特にどこにも行かず、ここに落ち着いてしまっているので、ゴローさん一家とも増々親しくなっている。

「カキが入ったらから明日うちで食べない?」金曜の夜、いきなりゴローさんから電話がかかってきた。

ビーチ沿いのレストランでカキを食べている人はみかけたが、なんとなく怪しく、食べたことがなかった私たち。ゴローさんのなら安心して食べられる。このチャンスは逃せない!と昨日、お邪魔させてもらった。

「昨日、知り合いの日本人がグアダラハラから来て、ほとんど持っていかれちゃったよ〜」と申し訳なさそうに1階のボデガ(作業場)にあるバケツを指すゴローさん。
中には巨大な貝が10個くらいある。なるほど、カキはカキでも岩ガキなのね。「今開けるから家で待ってて」
少しすると2階のダイニングにトレーいっぱいのカキを持ってきてくれた。みんなで食べるのかと思ったら「これ全部君たちのだよ」だと。わお。わお。巨大な 岩ガキをこんなに?夢中になって食いつく私。ああ、なんてクリーミーで美味しいのだろう!養殖ではないので生臭さもない。これならいくらでも食べられる (とその時は思ったけど、一個のカキが小さなステーキくらいの大きさなので、5個食べ終わったら、もう満腹。せっかくのジュンコさんの手料理はあまり食べ られなくなってしまったのが残念だった。そう惜しむ私ってかなりの食いしん坊?)

貝紫を追って70年代にメキシコにやってきたゴローさんの魚料理は最高だが、彼との会話もいつも美味しい。昨夜は「宝探しエピソード」から始まり、ビッグドッグの「ピラミッドの謎」へ渡り、しまいには「人間って動物系と人間系と宇宙系にわかれる」話へ展開。
「だから同じ系統の人と会うと波長がぴったりなのね」
「昔から人間(要するに前々の人生から人間だった人)はピラミッドビルダーやアトランティスの文明の血を引いているんだよ」
「ビッグドッグがグランピラミッドの中で一夜過ごしたのにも意味があるんだ」
「人間系の人たちはみんな太古の記憶が潜在意識に残っている。ぼーっとしているとそれがなんとなく蘇るんだ。でも、蘇ると気になって考えだしてしまうけ ど、その時は左脳を使ってしまうから、記憶が消えちゃうんだ。ビッグドッグもぼーっしているとピラミッドの謎が解けるんじゃないかなぁ。でも、それはロ ジックとかでは説明できないから、結局謎は謎のままなんだよね」

会話は日本語、英語、スペイン語のごっちゃ混ぜ。ところどころ、英語でビッグドッグに説明を追加する私だったが、ここで気がついた。英語では「ぼーっとする」とうまく言えない。
veg out, meditate, clear the mindなどと試してみたが、veg outはあまりにもバカ。meditateもclear the mindはあまりにも「動」な言葉。ぼーっとするってもっとパッシブな行為じゃない?言葉には特有な文化があり、文化には特有な言葉がある。英語圏の人々 はぼーっとできないのかも。昔、哲学のクラスで英語ってロジカルで分析的な言語で左脳を使う言語だが、日本語はビジュアルで直感的、右脳を刺激する言語だ というディスカッションがあったが、昨夜の会話でまたまた納得してしまった。

Thursday, February 14, 2008

La Cultura del Amor

数年前、オアハカにいた時、みんな自由に愛を表現しているのに驚かされた。別にオアハカじゃなくても、みんなオープンに愛を表すんだけど、特にオアハカは 先住民族の人口が多いということでな〜んとなく日本人に似たおじさん、おばさんが広場でいちゃついているからドキっとしてしまう。子連れの夫婦なのに、公 園のベンチで真っ昼間からヘビーペッティング!どっひゃ〜〜!

ここでも海水浴しに都会からみんな集まる週末なんかはマリアッチバンドの稼ぎ時。ビーチサイドのレストランでは彼らの愛のカンシオンを頼む夫婦がいっぱいいるからね。
セニョリータ(またはセニョーラ)に花束はいかがですか?と赤いバラをいっぱい抱えた少年も忙しい。

やっぱりラテンの国々には日本にはない愛の文化があるのね。
だからなのか、「この日は愛の日よ」と特別に決めなくてもいいのかも。
偽りの「愛のマーケティング」なんて必要なのかも。
今日はバレンタインだけど、ここではただの木曜日。
いつものように愛いっぱいの木曜日。

Tuesday, February 12, 2008

猫もお釈迦様も

ネコの寿命は人間のより短いのにどうしてこんなに眠っていられるのだろう?

我々より悟っているのかもしれない。
「続きは来世・・・」

私も見習いたい。

Monday, February 11, 2008

Cielo Y Mar

今月はスペイン語強化月間・・・と決めていたわけではないが、毎日少しでもちゃんと勉強するようにしている。語学はやっぱり使える環境で勉強するのがベス ト。日本やアメリカで勉強しようと思っても使う場がないと学んだことはすぐに忘れてしまう。特に独学でやろうとするとかなり無理がある。でも、ここでは学 んだフレーズや言葉をすぐに試してみれるから何割かは確実に頭に残るのだ。(100%ではないのが悲しい。)

フランス語圏にいる時は何十年も前に覚えた言葉たちがみるみる蘇るのに感動したが、使わないとどこか記憶の奥深い、意識が届かないところに隠れて眠ってしまうようだ。

先 日、いきなり玄関に現れたカナダ人は(図々しくも)我が家のインターネット接続を借りたい、パスワードを教えてくれ、金は払う、とやってきた。「サービス は私のではない。家の者に相談してくれ」と頼んでもよくわからなかったらしく、何度もやってきた。(「ちょっと厚かましくない?」とビッグドッグも眉を寄 せていた。)たぶん、この人は英語がよく理解できないんだ、と思い「フランス語は?」と訪ねると急に明るくなる彼だったが、私もバカ。「フランス語は?」 なんて聴いたって、まともに会話できるほどの語学力なんてない。言いたいことが言えないだけでなく、知っている言葉を羅列するのにも苦労する。何か言おう とするとスペイン語が出てきてしまう。がぁぁぁぁ。

英語、スペイン語、フランス語のわけのわからないチャンポンで話がなんとなく伝わったのが奇跡のようだ。だけど、一番悔しいのは、彼がいなくなってから「あ、そうだった」といろんなフランス語の表現を思い出したこと。

最近は日本語も使わないからヤバい。ブログで妙な日本語があったら注意してね。

因みに今日の日記のタイトルは「空と海」 
Cielo y marはスペイン語です。フランス語だとle ciel et la mer.
空も海も毎日表情を変えています。







Wednesday, February 06, 2008

スーパー・チューズデー

カタカナだと(そしてイントネーションを変えると)なんだか郊外の食料品店のように聞こえるけど、アメリカではこの2月の第一火曜日は一気に24の州がアメリカ大統領選候補の予備選挙を行う大事な日。

今住んでいる家には衛星テレビがあるので、ちょい釘付けにさせられているビッグドッグ。(先週からお腹の調子がかなり悪いビッグドッグはスーパーボウルもお家で静かに見ていました!)

REMフリークの友人のブログで「オバマはコイズミ」と書いてあったが、なんとなくそんな感じ。ルックスは私も大好き。死んだ親父に似ている。とても似ている。そして優秀な演説者だ。すごい人気者。だけど、肝心な問題に対してどうなんだろう?

しかし、私はクリントンは好きではない。とても政治家している。怖いし信用できない。友人は「オバマがコイズミなら、クリントンは?」と聞いていたけど、クリントンは田中真紀子っぽいと思う。

「オバマは経験が薄すぎて万が一当選しても共和党に圧され何も達成できないと思う」というビッグドッグ。「でもクリントンはもういいよ。アメリカはすでに20年間もブッシュ家かクリントン家が政治を握っている。世襲による権力継承はもうウンザリだよ。」

またまた頭を抱える大統領選。

「でも、さあ、誰が当選してもブッシュはバイバイだからいいじゃない」と思いたいが、戦争、経済、違法移民、環境などなど大きな問題がたくさん待っている。
誰が当選してもかなりラフな4年間になるに違いない。

Saturday, February 02, 2008

マサ〜!

私の甥っ子の名前は真と書いてマサシと読む。彼のお母さんとおばあちゃんはいつも「マッチ」と呼び、お父さんは「マサ」と呼んでいる。いつか大きくなった らメキシコに連れてきたい。たぶん名前で盛り上がるに違いない。というのは、マサはメキシコの主食、トウモロコシの粉のことだから。

一日三食、必ずこのマサが食卓に現れる。日本でもお馴染みになりつつあるトルティーヤはマサを練って薄くのばし、軽く焼いたマサの「クレープ」。肉や野菜 を挟むとタコスになる。チーズを入れて焼いたり揚げたりするとケサディーヤだ。揚げたのはトスターダ。魚の酢漬けサラダ、セビーチェを乗せて食べると mmmm! アボカドをつぶし、ライムや薬味を入れたワカモレを乗せてもmmm! でも、それだけではない。中華まんの「パン」の部分のようにマサを使い、中に肉や野菜などを詰めて蒸すタマーレもポピュラーだし、厚めのトルティーヤ、ソ ペスもポピュラーだ。こちらはなんだか日本の「おやき」みたいな歯ごたえだ。

トルティーヤはシチューなどのおかずと一緒にパンのように食べたり、かりかりに揚げてからソースをかけたりもできる。それなりにバラエティはあるのだが、 メキシコに何週間もいると何もかもマサ〜〜!という感じになってしまうのだ。日本人だと朝昼晩ご飯を食べても飽きることはないので、たぶんメキシコ人も普 通に「食事には必ず何かしらマサ製品を」というふうになるのだろうが、あまりのトウモロコシ漬けで最近参っている。(汚い話だが、マサ、マサ、マサで便も ベージュ色になってしまうのよ!)

あと、メキシコも「豆」が重要な食材だが、調理法は煮豆か煮た豆のピュレーくらいだ。日本の大豆のように豆腐や醤油、味噌、納豆、きな粉やあんこになった りしないのがなんだか不思議。日本の食文化の凄さを再確認させられる今日この頃だが、これは価値観の違いからくるのだろう。豆をいろんなふうに加工するよ りみんなで楽しくしている時間の方が大事なのだろう。ということで、私もここにいる時は幸せを食に求めずに村の愉快で優しい住民との交流に重点を置くよう にしないと。