Saturday, November 26, 2011

レッツ・ゲット・ロスト

「アトトニルコに行ってみようよ。旧街道、カミノ・ビエホで。」

サンミゲール・デ・アジェンデの町中を数日間歩きっぱなしだったので、ちょっと隣町まで行くことにした。観光局からもらった地図を見る限り、アトトニルコは近いし行きやすそうだったが、私を完全に信用しきれないビッグドッグはまず観光局のお兄さんに道順を聞いてからの出発だった。

「ここを右折するんだよね?」ビッグドッグは確かめようとした。「アトトニルコと表示されているし。」
「違うよ。まっすぐだよ。」彼が曲がりたい方向の道はあまりにもまともに舗装されていた。「旧街道はこっちだよ。」
いかにも「旧街道」っぽい石畳の道だった。
「観光局の人はここで曲がるって言っていなかった?」
「それは旧街道じゃない行き方のことじゃない?」
私は譲ろうとしない。絶対に正しいから!

私が指す方向へ進んでくれたが、半信半疑なビッグドッグは通り過ぎるドライバーや歩行者に何度も訪ねた。
「これがカミノ・ビエホですか?」
訊かれた者はみな頷いた。

しかし、石畳の道はそのうち石ころだらけの舗装されていない道に変わり、このまま渡っても大丈夫?という感じの川になり、最後には何もない原っぱになってしまった。原っぱには馬車か何かが走った跡のようなものはあったが、道らしき道はない。牛やヤギの群れ、馬たち、そしてカウボーイ風の人たちが数人いるだけだ。旧街道も「チャペルのルート」も何もない。どうやら、これはカミノ・ビエホじゃないな。

ここは何処?

なくなってしまった道

「エル・カミノ・ビエホかどうか訊かなかったのがいけなかったのかも、、、」ばつが悪そうに私は言った。「ただカミノ・ビエホじゃ “これは古い道ですか?” と訊くようなもんだよね。みんな多分、これが古い道かって?当たり前じゃないか!と思っていたんだよね。」

ビッグドッグが最初に曲がろうとしたところまで戻った。道のない原っぱから、川から石ころだらけの道から石畳の道を。そして表示されている方へ曲がった。最初はちゃんと舗装されているこの道も少しすると舗装されていないホコリっぽい道に変わり、小さく質素なチャペルや冬眠中の集落の間を通り、ついにアトトニルコへ到着。

途中の集落で出会ったラスタ犬


「ここのサンクチュアリオはインディオのシスティナ礼拝堂だ」と教えてくれたのはミスター・カリフォルニア。彼のトラックの後ろに我々は駐車したのだが、カリフォルニアのライセンスが目に入り声をかけてみると、彼も中央カリフォルニア出身だった。

アトトニルコのサンクチュアリオの天井と壁は宗教的なシーンや歴史上のシーンのペインティングで埋め尽くされているのだが、システィな礼拝堂とは比べ物にならない。
旅はやっぱり目的ではなく、途中なんだよね。
「迷子になったのが一番楽しかったね。」
私のナビゲーションの失敗はさておき、ビッグドッグも同意してくれた。

システィナ礼拝堂ではないが、、、

オフロードをやってしまったからなのか、次の朝、パンクに気づく我々。運良く数件先にタイア屋があり、すぐに修理してくれた。

Thursday, November 24, 2011

神の家

オアハカからメキシコシティからグアダラハラ、、、メキシコの植民地時代の過去は主に中央の高地に集中している。

石畳の道、巨大な石造建築、鉄細工、美しい公園や教会の数々。

「コロンブスが新世界に到着してから40年もたたないうちにモレリアなどの街が設立されたのは凄すぎる!」ビッグドッグはコンキスタドールが動く早さに感動している。サンミゲール・デ・アジェンデにやってきた我々は1511年に建造が開始された教会の前に立っていた。「1511年!コロンブスが来てから20年もたっていないんだよ!」

私はスピードよりスケールに感動。何百年たった今も、壮大だ。500年前にどうやって建築されたのだろう?

ここ、サンミゲール・デ・アジェンデには実にたくさんの教会、寺院、修道院などがある。巨大なバロックやネオクラシカルの建築はいたる街角にそびえ立っている。「神の家」の比率は世界一かもしれない。

どうして新しい土地にこれほど多くの、そして立派な教会を建設したのだろう?原住民のピラミッドなどに負けないように?「オイラの神様が本当の神だ!もっとすごい寺院を築かねば!」という感じだったのだろうか。

しかし、メキシコの教会では必ずしもイエスがトップではないのだ。マリア像の方が高い地位にあるところが多い。そして、どの像もとてもリアル。ヨーロッパの彫刻は大理石などのモノクロームだがさすがカラフルが好きなメキシコ。聖人などの像はどれも蝋人形チック。グロテスクなほどに。

ピンぼけだけど、雰囲気は伝わりますよね?

内側は時々不気味でも、外側はどれも見事だ。私は特にサンミゲール・デ・アジェンデの中心にあるラ・パロキアに魅せられてしまった。巨大だが軽やかなこの建物はゲイテイストいっぱいの建築だ。こんなに大掛かりな大聖堂なのに非常にデリケート。このパラドックスが魅力の秘訣かもしれない。建築を独学で学んだ原住民のレンガ職人の作品だそうだ。彼はヨーロッパにも行ったことがなかったが、絵はがきやリトグラフを見て自分なりに解釈し、デザインしたとか。

コテコテ!だけどプリティ!カトリック教に改宗したくなってしまうほどだ!
ゴージャス!ラブリー!





ふざけた観光客かと思いきや、実は照明を調整する従業員だった。「一緒に上ろうとしないでよかった」とビッグドッグは後でホッとする。

ヒカマという塊茎類。野菜も果物もなんでもチリパウダーをかけて食べるのだ。

お仕事へ向かうミュージシャン

平穏な町と美しい建物が魅力のサンミゲール・デ・アジェンデ

Tuesday, November 22, 2011

天国への階段

一段、二段、三段。次々と重なる階段。そして坂。険しい坂。険しい階段。家の上にさらに家。そして、その上にまた家。

ワナワトはクレージーなキュービスム作家が作り出したような街だ。狭い谷に重なるいくつものカラフルなブロック。名前は原住民の言葉で「カエルの場所」という意味らしいが、銀山の発見によりカエルはスペイン人に取って代わった。発展するスペースがないなんて問題にはならなかったようだ。横に広がる場所がなければ縦に成長しようじゃないか。ワナワトは究極の垂直シティだ。

昔から訪れてみたかった。道路網が必要になった時代、もう地上には道路どころか立体道路すら入れる場所はなかった。そこで考えられたのが地下道路網。すべてが地形に沿って造られた地上は迷路だが、その迷路に沿って造られたのか地下道路網も迷路だ。

「ひとつ間違ったら、完全に迷子だね。永久に地上に出られないかもしれないよ」何年も前に、ある老カナダ人から聞いた話だ。

すげえ。永遠と地下道路を運転し続けるかわいそうなドライバーを想像してしまった。かわいそうだが、なんとなく楽しそう。ロンドンのロータリーにはまってしまうより楽しそうだ。

ワナワト人によると、ここは「メキシコの中心」だ。地理的に国のど真ん中らしいが、歴史と文化の中心でもある。植民地時代に建てられた立派なビルや寺院、歴史的スポット、鉱山とミイラ。そう。何故かミイラも街の名物なのだ。気候の関係、埋葬された遺体は腐らず、ミイラ化し、何体ものミイラがミイラ博物館で展示されている。

訳が分からないものを恐れる人はワナワトに来ないほうがいい。道はゴチャゴチャ、細い通路はどこへ行くのかまったく分からない。二人並んで通れない小路もたくさんある。すべてがクネクネ、あちらこちらへと行く色彩豊かな迷宮だ。地図にするのも不可能なのかもしれない。だって、同じ地図は二つとない。縮尺だっていい加減だ。みんな勝手に道が表示されていて、どれも本当の地形とは異なっている。グーグルマップすら正確に表示できていない。

ワナワトを見るには地図なんて捨てて、カンでいくのがベスト。階段やトンネルを恐れずに。どんどん、どこへ行くのかわからない階段を上る。上って、上って、下がって、また上る。地元の人たちはへっちゃらだ。前屈みでゆっくりと階段を上るおばあちゃんたちだってへっちゃらだ。延々と続く階段、あちこちへと曲がる階段をとことこと上る。両手に荷物をぶら下げて。100年近く、毎日、いや、毎日数回かもしれない、何段もの階段を上るお婆さんたち。一生のうちに何段上ったのだろう。彼女たちにとって天国は階段のない場所なのだろうか。

メキシコ人は「ワナワトは一生に一度は訪れないと」というらしい。日本で言えば京都や奈良?スペインから独立を勝ち取る切っ掛けとなった重要な街だ。エル・ピピラという独立戦のヒーローは背中に石の板を縛り付け、スペイン兵と戦い、彼らがひそむ穀倉に火をつけたとか。(彼の像は山の上から街を見下ろしている。もちろん、階段を上り、近くまで行けるのだが、足の不自由な人たちのために唯一のケーブルカーが走っている。)

ヨーロッパからの観光客も見かけるし、日本からの旅人にも出会った。ワナワトの豊かな文化、ナイトライフ、芸術(壁画家ディエゴ・リベラの出生地だ)や若いエネルギーにひかれてやってくる人が多い。ワナワト大学のお陰で街の中心は若い人たちでいつも賑わっている。そして、彼らは他の街の若者よりなんとなくヒップだ。

だけど、北米人はあまり見かけない。リゾートや海岸方面では大勢見かけるカナダ人もここでは見かけない。(カナダ人が行く場所にはいつも彼らの国旗があちこちに掲げられているのだが、ワナワトでは一つも目撃していない。)

「どこへ行くにも歩かないといけないからだよ」というビッグドッグ。
「それと階段ね。」

こんなに魅力的な街なのに。メキシコ人は「一度は訪れたい」かもしれないが、私はここに住んでみたい。カラフルでかわいいアパートを眺めながら、あ、あれがいいかな?それとも屋上にガーデンがあるあそこがいいかな?と「もし住むのだったら」を想像していた。もちろん、どこも天国への階段を上らなければならないが、いいワークアウトになりそうだ。少なくても、高いジムへのメンバーシップはいらないよね。

上って、上って、、、

ワナワト大学。入り口は階段の上です。

遠くに見えるブルーの建物が気になったが、、、

たどり着くまでにはいくつもの階段が。

階段だらけだ!



そして石の階段が崩れたら、木のハシゴがあるぜ。

ディエゴ・リベラ博物館の中にあった、ラフで素朴な「ディエゴとフリーダ」

街を展望すると。

狭い道路に、、、

、、、もっと狭い小路。



ちょっと不安定にみえる「追加」



道の上の「空気」もいい「空間」



トラックより便利。

初心者ドライバーには無理?



どこへ行く道なのかわからないのが楽しい。

Thursday, November 17, 2011

メキシコ、オン・ザ・ロード

「ワールドワイド・ワード」では我々がいかにオン・ザ・ロード生活が好きか、頻繁に書いていますが、特にメキシコのロードトリップは魅力に満ちています。

現在、またロードトリップを企画中。ここ数年、あまり遠くに出かけていないのでワクワク。その前に、過去のロードトリップからの写真をアップしす。

シワトランのバー

観光客を待つワニ

スペイン料理のガスパッチョではなく、刻んだフルーツ。

コリマ州は緑が美しい!

海は鮮やかなブルー!

出番を待つベースたち(&マリアッチたち)

アボービ建築はこういう感じ

パツクアロの結婚式。左の男のキュート!お父さんとお揃いでした。

ミショアカンの青果は最高

モレリアの街。行くたびに雨なのだ。

オアハカの田舎。サボテンの垣根がナイス。

古代サポテカ文明の中心、ミトラ。遺跡のディテールです。

ラスカーニャス付近

ステキな住居!

一時は高級リゾートだった場所も「遺跡」に。

鞍が欲しければラワカーナ

ワラチ(日本語の草鞋から由来したとか?)が欲しければヒキルパン

コクーチョの村はミショアカンの山奥に隠れているが、、、

唯一ここで作られる焼き物、コクーチャは有名だ

モナーク蝶保護区の外で懐かし名前に出会う

Beer!

飲んで、踊って、、、

カーニバルは日本の縁日みたい

かなりブラックなユーモアのセンス?

大きな機械なんて必要ない。