Friday, June 29, 2007

エデンの季節

「いつもこんなに美しいの?お天気が悪い時ってあるの?」
牧場を訪れる人たちがみんな驚くほどクラークバレーは恵まれた環境だ。周りの山々が海からの霧や風を抑え、牧場の上はいつも青空。(去年の夏から我々は2日くらいしか曇りの日を目撃していないのだ!)少し内陸に入ると夏場は強烈に暑いし、冬場も寒いがここは年中穏やか。

そして春に植えた花や野菜がどんどん育っている。私たちは夏の間は留守になると思い、あまり野菜などは始めていなかったが、レンジャーのサラと最近引っ越してきたガラス屋ジョンの彼女、ローズの野菜畑は見事だ。巨大なレタスやズッキーニはもう収穫の時期だ。(私のレタスは鶏に根っこのところまで食べられてしまった。)小さなコミューンのようにみんなで豊作をシェアしている。

「今がベリーのピークだから、どんどん収穫して!」というと、彼女たちも「野菜もどうぞ!」と。

私はサラのズッキーニの花でフリッターを作ったり、土地の入り口近くにある野生のアーティチョークをローストしたり、ローズのレタスでカルビまきを食べたり。毎日が超グルメだ。ちっとも凝ったことはしていないのだが、新鮮で健康な素材での料理は美味しいだけでなく、楽しい。牧場は夏がエデンの季節なのね。

そんな中、ビッグドッグもここ数日、あまり不満をいわないし、まだ牧場を売りに出していない。迷っているのだ。あと数週間で熟す桃やネクタリンを食べたら迷いも消えるのでは?と私は密かに誘惑の果実に期待している。










写真はローズのビーチボール・サイズのレタスたちとサラのズッキーニ。

Sunday, June 24, 2007

ここは何処?

ビッグドッグは「根を下ろす」ことを恐れているのだろう。「僕たちは家は何軒もあるけど、住処はない」とよく人にいう。その通りだ。彼は若い頃から不動産を収集するのが趣味だったようだ。他が時計やレコード、電車の模型、高級車などのコレクションを集めるように彼は不動産を集めてきた。そのためにも学生の頃から働きまくり、ケチケチ生活でがんばっているのだ。北カリフォルニアの数件の物件、ロスのコンドミニアム、そしてこの牧場・・・比較的安く手に入れたものから、かなりがんばってゲットしたものまで、いろいろ。

だが、そのいずれかを「住処」にするというのはなかなかできない。家具などの生活必需品を入れられないのだ。これには何か精神的なバリアがあるみたいだ。私が「オフィシャルな手続き」というのが苦手のように。私は東京で何度引っ越しても住民票は実家から移していないし、「大人」を証明するような行為(入籍、不動産や車などの所有、子づくり(!)など)も避けてきた。

牧場の家も同居人の家具などしかない。
「家具などはどうでもいいけど、もっと自分の家っぽくしようよ」と提案すると必ず「それより先にやらなくちゃいけないことがあるじゃないか」と返し、「やらなければならないこと」を探す。策の修理、納屋に電気を入れる、芝生を復活させる。やることは限りなくあるから参ってしまう。

管理人が戻らないと決まってから、馬たちと冬場を牧場で凌いでいた友人のJDは本格的に引っ越しているのだが、彼はまず部屋を自分のテイストに改造。壁の色を変えたり、羽目板を入れたり、照明を変えたり・・・かなりのお金を使っている。そして昨日、サンフランシスコから戻ってくると、なんとトラックには新しい家具、絵画、キッチン用品が山積みに。

これが普通なのかも。たった1年の滞在かもしれないけど、その12か月を心地よく過ごすために努力する。ちゃんと自分の「住処」を作る。

それができない我々は今も「ホームレス」でどこにいても誰かの住処を“借りている”気分だ。だからか、夜中に目が覚めるとよく「ここは何処だっけ?」となかなかわからない。牧場?ロス?ランキャスター?ハワイ?メキシコ?パリ?アケータ?東京?でも、どこにもホームがなければ、どこでもホームなのかもしれない。それはそれでいいのかもしれない。

Saturday, June 16, 2007

バットマン対忍者オバサン

コウモリバトルはまだ続いている。
軒の隙間に金網を詰めたのだが、まだ退治できていないのだ。

「まだいるよ」と先週、ビッグドッグはキッチンの天井を見ながら言った。屋根を登ると、何匹かのコウモリが金網に引っかかっているので、まず彼らを逃がすのに一苦労。ワイアカッターで金網を切りひらくのだが、どうしても逃げてくれないヤツも。
「早く、飛んでくれよ」といいながらワイアカッターで優しく押すといきなり歯をむき出し「キーーーー!」と私に向かって叫ぶのだ。

そして、もっと悲惨なことに、今度は屋根の上のソーラーヒーターのパネルの下にも大量に巣を作っているのだ。ホースの水力で押し出そうとしても親コウモリしか脱出しない。困ったもんだ。

去年、ウェブサイトからコウモリ小屋の作り方をダウンロードしてもビッグドッグは見向きもしなかったのに、とうとう彼もギブアップ。「設計図はどこだ」と聞くので、ページを見せてあげる。ベニヤ板で簡単に作れる小屋だ。

何をやるにもアシスタントが必要なビッグドッグは私をアシスタントにしたがるのだが、私は一人で作業をするタイプなので、二人ではなかなか小屋が作れない。

「違うよ。先に前の板を切った方がいいんだよ」「隙間もちゃんとコーキングしないと!」いちゃもんばかり言う私に飽きれてしまったビッグドッグはしまいに「勝手に自分で作れ!」と怒って消えてしまう。

完成し、キュートなコウモリのシルエットもスプレー。私は大満足だが、はたしてコウモリたちはどうなのだろう?

夕方、庭の水まきをしながらキッチンの上の窓のところを見ると、なんと数匹のコウモリが外側にぶら下がっている。またまた忍者オバサン出場だ。(もう、何度も屋根に登っているので脚立はそのままにしてあるのだ。)上がってみると、ぶら下がっているのが赤ちゃんコウモリだというのがわかる。まだうまく飛べない。仕方がないので、紙袋に誘導し、バットハウスまで連れていき、無理矢理押し込む。これで、親コウモリも入居してくれるといいのだが。

でも、今日、覗いてみると入り口近くにいる赤ちゃんコウモリは・・・蟻だらけ。ガ〜ン。これじゃ、誰が入居してくいれるのいうのだ!

Thursday, June 14, 2007

なんだか

牧場と管理人。我々には縁のないものなのだろうか?
去年は日本にいる間、管理人をやってくれていた友人(いや、「元」友人)が牧場資金を持って夜逃げしてしまった。それからは我々が自ら管理しているのだ。これは非常に「正しい」ことだと思うのだが、ビッグドッグは「そんなに縛られたくない」ということで、前にも伝えたように牧場を売り飛ばそうとしている。まだ売りに出していないのは「10日に元祖管理人夫婦が戻ってくる」ということで、ま、一応様子を見よう、ということになっていたからだ。彼らは17年間この牧場で暮らしていただけでなく、ほとんどのインフラは彼が入れたものだ。

しかし!その老夫婦が到着するやいなや、「やっぱり無理だ」と言われてしまい、2日で去られてしまった。真相はわからないが、どうやら管理人の息子が「オヤジにはもうそういうのは無理だよ」と息子に無理矢理辞めさせられてしまったようだ。理由は何であろうと、これで夏のヨーロッパ滞在は一瞬にして消えてしまった。

「ま、フランスかイタリアの田舎でのんびりしようということだったけど、この牧場だって負けないくらい素敵な場所よ」と私は意外とポジティブだった。まだフライトもブッキングしていなかったし、金銭的には損はしていないから。でも、その直後に日本行きを決め、家族や友人に連絡すると、24時間後にはこの旅もキャンセル。(アメリカ発の航空運賃がバカ高く、頭にきてしまったのだ。)とにかく、今年の夏は牧場でゆっくりしなさい、ということなのだろう。

ある友人に「手放すことを淋しく思っていたから、そこで過ごす時間が与えられたんじゃないでしょうか?上の方の誰かさんから」といわれて納得。そうなんだろうな。限られた時間を目一杯堪能しろ、ということなんだろう。

ということで、今はベリーシーズンを堪能。ラズベリー、ブラックベリー、ロリーベリー(そんなの日本では聞いたこともなかった)が毎日がんがん熟してくる。ここ1週間くらいは一番奥の「きぬ園」一番前の「真珠園」からベリーを積むのが毎日の夕方の行事になっている。小川の脇には野生ベリーもあるので、こっちのもゲット。パイにしても、クリームをたらしてそのままでもおいしいし、アイスクリームやヨーグルトのトッピングにしてもベリーグッド。ベリーをそのまま食べるのに飽きたら、冷凍したり、ジャムにしたり。

同時にサクランボも見事に熟してきた。
「サクランボの樹だったのね、あなたたちは!」という具合に実ができて初めて桜だったと知る私。5本もあるのだが、ちゃんと実をつけているのは2本半。でも、これがまた実に美味なのだ。いわゆる「アメリカンチェリー」として知られている濃い色のチェリーではなく、日本のサクランボに近い「Rainier」という種類なのだが、病み付きになってしまう。ブランデーと一緒に軽くローストすると・・・・もう、頬が落ちてしまいそうだ!

Tuesday, June 05, 2007

2週間

たった2週間の留守だったのに、牧場に戻ると水不足で干涸びている植物、完全に消えてしまった苗(どこへ行ってしまったのだろう?)や先生が離れている間バカ騒ぎする生徒のように乱れている雑草だらけだ。どうして?

その上、この2週間の間に(また)コウモリが厨房屋根裏に(また)引っ越してきた。

金曜日、トラックの荷台にすくすく育った苗や友人から貰ったサボテン類、ビッグドッグの大工道具と親戚から貰った中古草刈り機などを積んで牧場へ。土日は庭の手入れで終わってしまったのだが、日曜日の夜、夕食の直前に何か屋根の上に登っている音がした。野生の七面鳥が屋根の天辺が好きでよく登るのだが、ゴルフボール大のウンコをそこでやられてしまうので、その都度、追い払っているのだ。

「あ、また七面鳥が!」と思って外に行ってみると、なんと去年退治したはずのコウモリがまた屋根の軒の隙間から屋根裏に入り、暮らしているではないか!

「懐中電灯!懐中電灯!」何をやるにも大騒ぎしたがるビッグドッグは私に叫ぶ。
「知らないよ。どこかにあるんじゃない?もう暗いし、遅いから明日でいいじゃん」と言っても私のいうことなんか聞いちゃいない。でも、外に出たかと思ったら、もう戻っている。
「やっぱり明日にするよ。金網を隙間に入れていたら、そこにコウモリが引っかかってしまって・・・」

でも、ビッグドッグは二度と屋根に登らなかった(今のところは。)私がコウモリ退治担当にさせられてしまったのだ。

「どうせならキャットウーマンの衣装でも着ていればなんだか、その気になれたのかもしれないのに」とぶつぶつ文句をいいながら次の日、嫌々はしごを登った。着ていたプリンスの「イマンシペーション」時代の黒い長そでTシャツはアメリカでは「忍者風」に見えるのかしら、なんて考えながら。で、死んでしまったコウモリをなんとか取り出し、隙間をコーキングしたり、金網を詰め込んだり。

でも、まだ今日もコウモリたちはいるようだ。なかなか退治するのに時間がかかる。本当はもう退治するには遅すぎるのだ。夏になると子育ての時期で子供たちは親と飛べないので退治してはいけない。「5月下旬までに追い出せなかったら、秋まで待つこと」なんてコウモリウェブサイトはいうのだが、コウモリのオシッコって猫のより100倍も、といいたいところだが、猫のもかなり臭いので、10倍臭い。真夏の暑い日には家中その匂いが広がってしまう。コウモリは虫などを食べてくれるいいヤツで個人的にはとても好きだから、余計に辛い。もっと余裕があればちゃんとバットハウスを先に作っておけたのに。仕方ない、と自分に言い聞かせているのだが、なんだか自分のこの残酷さに滅入ってしまっている。