Thursday, August 30, 2007

夏の終わり

昨夜、シーズン初の大雨が降った。稲光りと雷を伴うドラマチックな雨。乾ききっている原っぱとかは嬉しかったに違いない。そのお陰か、今朝は久しぶりに七面鳥軍団が家の回りに現れた。

去年の夏と秋は十数羽の野生の七面鳥の天下だったが、春になるとメスが急にいなくなり、そのうちオスたちも頻繁に現れなくなってしまった。巣作りしていたようで、夏になると、メスの一羽がヒヨコをつれてまた家のとなりのオークで夜を過ごすようになった。が、去年からの大人たちは今までどこへ行っていたのだろう?

愉快なオスたちは羽を目一杯広げ、翼の先を引きずりながらゆっくり歩く。その姿はまるで狂言師。果樹園の中に飛び込む奴らもいるのだが、自分から入ったくせに「出れない!出れない!」と大騒ぎする奴も。そんな騒ぎなんか完全に無視、露で瑞々しい葉っぱを夢中に突っつく奴。笑わせてくれる。

去年の秋頃から牧場の母家に母娘が同居しているのだが、その娘も今週から高校がまた始まり、日曜日にお父さんが住むアイスランドから戻ってきた。

ああ、季節の変わりだ。アンニュイになりたいところだか、秋が深まる前に手掛けなければならない作業がたくさん待っている。暖炉の煙突は先日掃除したし、絹園(奥の果樹園)のかんがいシステムも完了したが、これから擁壁を修理し、和歌園(真ん中のリンゴ園)と真珠園(前の方にある果樹園)にもかんがいシステムを入れなければならない。アンニュイになっている余裕なんかないのだ。

Monday, August 20, 2007

スーパーはスーパーでも

久しぶりのロスは「わ〜文明社会に戻ってきた〜!」という感じだ。そして久しぶりにスーパーで野菜を購入。

牧場では近所の無人スタンドとファーマーズマーケットでほとんどの食材が確保できちゃう。小麦粉、米、砂糖、乳製品などは牧場の住人が経営するヘルスフード店で買っているからスーパーで買うのは肉と酒くらいだ。

「アメリカのスーパーって巨大だから最初は楽しいけど、実は訳の分からない物が多いよね」と弟にいわれたことがある。彼はある年、サンディエゴへよく仕事で来ていた。私と似て、アメリカの外食が苦手な弟は必ずキッチン付きのレジデンシャル・ホテルに宿泊し、自炊していた。

私もスーパーのいくつもある通路を素通りしてしまう。必要な物はほとんど全て端にあるから。青果、肉や魚、乳製品、酒。百種類のシリアル、50種類のドレッシングやソース、数々のインスタント食品や加工食品などがある通路は私にとってミステリーゾーン。だからか、他の人たちの買い物に対する好奇心が巨大なのだ。レジで必ずチェック!(実は最近、私だけではないことがわかった。サンフランシスコ在住の友人も同じことをしているとか。)で、買い物の中身でその人をジャッジしてしまう悪い癖がある。

若いのに食材のみを買っている女性だと「あら、この人はちゃんと料理するのね。偉いわ」と思ったり。加工品だらけの買い物だと「だからデブなのよ」(大きな人なら)と思ったり「いまに病気になっちゃうよ」(デブじゃなければ)と思ったり。でも、こうやって黙ってシロシロ見るというのはとても日本的。アメリカ人はみんなおしゃべり好きだから黙ってなんかいない。

自家製チリ・レイェーノを作るために大量にフレッシュ・パシーヤペッパーを買っていると「ね、それどうするの?」と聞かれたり、野菜売り場で美味しそうなマスタードグリーンを選んでいると「どうやって調理するといいの?」と聞かれたり。(マスタードグリーンやケイルなどの青物はどうやって食べても美味しい!)

「でもさ、アメリカの野菜って菜っ葉類以外はまずいよね」という弟だが、私は「そりゃ、大手スーパーだからじゃない?」という。 大手スーパーは巨大農場の大量生産された野菜を売っているし、種類も少ないけど、Whole Foodsのようなスーパーばベジ・フェチの私には遊園地のように楽しいし、Trader Joeに行けばインスタント系も普通の食材から出来ているから安心して食べられる。(そして、まずくないものもある!) 選択肢が多いというのがアメリカの最大の魅力だね。

Thursday, August 16, 2007

続き?

ロード記の続きを書こうとしているのだが、過去にあまり興味がない私なので、何事も過去になればなるほどどうでもよくなってしまう。

ということで、イエローストーン以降の旅を簡単にまとめてしまうと:

*モンタナ州は牛肉産業がとても強く、何事にも優先され、絶滅に瀕していたバイソンでも邪魔だったら殺害してしまう。「そんな州にはいられない!1セントも落としたくない!」と急いで西へ向かう。

*ロッキー山脈は本当にロッキーなのね!大きな丸い岩を積み上げた感じでとても芸術的だった。

*ワシントン州へ入ってもまだ暑い。オレゴン州もカリフォルニアも。内陸は死にそうに暑い。

*ネイティブアメリカンの保留地にカジノがよくあるのだが、しょぼいカジノが多い。チェウェラのカジノは「え?あれだったの?」と誰もが通り過ぎてしまう掘建て小屋。向かう途中の看板は立派なのに。

*今までカナダにすんなり入れたことがない私は今回も疑いの目で尋問され、やっと入れたもらえた。一緒のビッグドッグのほうがよほどヤバいのに。でも、彼は「お前といるといつもこうだから困っちゃうよ」と文句を。

*カナダのオカナガン・バレーはメキシコのソノラ砂漠の延長でカナダでは一番気候がいい地域らしいが、ここも暑い。たくさんの果樹園を通りペンティクトンに住む友人のところまで行く途中、オリバーという町の果樹園の多くがインド系経営者でビックリ。ターバンを巻いてトラクターを操縦する男たちがなんだかエキゾチック。

*日本国内旅行の楽しみはの一つは郷土料理だが、アメリカにはもうほとんど存在しない。効率を考えてしまうと業務用冷凍野菜などを使ってしまうらしく、どこのレストランも付け合わせの野菜が同じで悲しい。ソースや味付けになる食材もどこも同じ味だ。果樹園エリアの夕食についていたオレンジスライスには超がっかり。どうして裏の果樹園のアプリコットや桃じゃないの???

Sunday, August 12, 2007

世界の観光客

さあ、ロード記の続きよ。

世界の観光客

ボイジに数日滞在したら、今度はゆっくりアイダホの南を通り、ワイオミング州グランド・ティートンとイエローストーン国立公園へ。

ヨセミテの大自然は壮大で素晴らしいが、イエローストーンは何ともいえない規模の国立公園だ。山あり川あり、滝あり谷あり、野生動物や熱水現象でも有名だ。特に熱水現象は世界一の規模とバラエティだ。



最初の白人冒険家がこの地域を訪れ、この世のものとは思えない現象の話を伝えようとしても「狂人の幻覚」とされてしまい、誰も信じなかったそうだ。わかるなぁ。湯気を吹かしながら流れる熱い川。氷のように輝く(だけど骨を溶かすほど熱い)温泉。高く噴水する間欠泉。悪魔のシチューのようにぐらぐら湧く泥。地獄のように赤く流れる小川。自分の目で見ないとなかなか信じられないものばかりだ。


その上、我々は雹の嵐にあい、ドロップ大の雹に打ちのめさせられたり、雷と稲光りの一晩をテントで過ごしたり・・・と、私にとっての初体験の連続だった。

世界の国立公園だけあって、世界中から観光客が訪れる。彼らを観察するのは大自然を観察するのと同じくらい面白い。

ヨーロッパからの観光客が一番まともだ。ビッグドッグがビデオを撮影している最中は静かにしてくれるし、カメラの前を通ったりカメラに向かってバカやったりしない。そういうのは必ずアメリカ人だ。

「ヨーロッパから?」ビッグドッグは隣でおとなしく待っている家族にきいた。
「オーストリアからです。」
「ヨーロッパからの観光客が一番行儀がいいんだよね。」
「行儀の悪いヨーロピアンが見たければヨーロッパに行かないと!」と行儀いいお父さんが教えてくれた。

そうか。ヨーロッパの人たちは自分のエリアではあまり行儀よくないけど、遠くアメリカまで来ると行儀よくなるんだ。アジアの人たちと違うね。

あるカラフルな温泉地域では韓国人らしい男性二人がボードウォークを離れ、立ち入り禁止ゾーンで記念撮影を初めていた。
「おい。サインが読めないのか?立ち入り禁止だよ!」とビッグドッグは彼らにいう。だが、男性たちはなかなか出ようとしない。英語が分からないのだろうか。「Get out! Get out of there NOW!」すぐ出ようとしないので、BDは切れはじめる。やっと男性たちは不服そうに出る。

日本人も本国でまともでも外国に行くと・・・という人たちが多いよな。

「一人ならとてもいい人で礼儀正しいのに複数になるととんでもない人間になっちゃったりするんだよね。」

しかし、野生動物を見かけるとみんなバカになるのだ。道のど真ん中でも急に車を止め、そこで延々と写真やビデオを撮る。駐車場に黒グマの子供が現れたらエルビス・プレスリーが生き返ったのかと思われるくらい全員パパラッチ化してしまう。「最悪!」なんていいながら、私も実は同じなのだ。



私もパパラッチ!

Thursday, August 09, 2007

新しいファミリー

ブログのアップデートをサボっていたら、どうでもよくなってしまった。困ったもんだ。

牧場の春の「愛の季節」が実り、最近は小指より小さな赤ちゃんトカゲをよく見かける。そして、数カ月間、大好きなオークの木から離れていた野生の七面鳥たちだが、去年の群から一羽の母親と11羽の子供たちが戻ってきた!普通の色の赤ちゃんの他黒いのが2羽、そして白いのが1羽いて、もうかわいくてしょうがない。牧場は危険も多い場所。山猫や鷹もいるし、バカ犬も多い。先日、新しいガラガラ蛇と出会ったけど、ガラガラ蛇はターキー食べないよね?とにかく一家、無事を祈る。

Friday, August 03, 2007

インスタントファミリー

牧場は桃の季節まっただ中!桃を食べ過ぎて体を壊すことは可能なのだろうか?それくらい毎日食べまくっている。頭の中では90年代中旬に流行ったプレジデンツ・オブ・ジ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカの「ピーチズ」がリピートしている。
"Going to the country, gonna eat a lot of peaches..."

ロードトリップ記の続きはこちら:


インスタントファミリー

「女性と違って男は子供が生まれても本当に自分の子供かどうかわからないからかわいそう」と大昔誰かが言っていたなぁ。今はDNA検査というのがあるから簡単に(でもない?)わかるけど、それでも子供(または母親)が名乗らない限りどこにどれだけ自分の子孫がいるかわからない。

ビッグドッグだってそうだ。世界中に大勢の子供が元気に生きているのかもしれない。

15、6年前、まだ東京で働きまくっていたころ、彼の親友から国際電話がかかってきた。
「座っているかい?」と親友は訊く。
「何だ?」
「マイクG覚えているだろ?」
「ああ、よく遊んだなぁ」
マイクは70年代ビッグドッグの仲間の一人だった。
「彼の妹覚えている?」
「ああ。俺たちとよくパーティしたね。」
「彼女の娘だという女性から連絡があって君が父親だと言っているんだ。」
「……」
「もしもし?」

70年代、ヒッピームーブメントの真っ盛りの一晩。その結果がWだったのだ。マイクの妹はまだ高校生(「そんなに若いなんて知らなかったんだよ!マイクもマイクじゃないか。俺に一言いってくれれば、妹に手は出さなかったのに」とBDは今でもいう)子供を生むと、即養子に出してしまった。それから20年がたち、Wも大人になり、結婚し、初の子供で妊娠すると医者にいろいろ遺伝系の質問にあうのだが、答えられなく実の親を探すことに。母親は比較的簡単に見つけられたが当時は国外にいたBDにはなかなかたどり着けなかった。

それから少しの間はお互い手紙を交換したり、時々電話で話したりしていたが、Wも結婚を繰り返し、4人の子供を育てている間にまたコンタクトを失ってしまった。3年くらい前だろうか、ある友人経由で父と娘は再び連絡しあうようになったのは。

私はあまり血縁関係にこだわりを持たない。養子だったら育ての親が実の親だ。生物学的な親を「実の親」というのもなんだかヘンだと思う。ファミリーってそういうものではないんじゃないの?

だが、ビッグドッグにとって血のつながりはとても重要。で、前から彼はWに会いたかったが、なかなかアイダホまでいくチャンスがない。そりゃそうだろう。アイダホって特別な用件がない限り、あまり訪れない場所だから。

ビッグドッグにとってアイダホまでの道のりは長く遠かったに違いない。地理的にだけでなく、精神的にも。しかし、延々と続くネバダの砂漠を超え、10日にはとうとうアイダホの州都、ボイジにたどり着いてしまった。Wが住むメリディアンはボイジの郊外、車で20分くらいのところだ。住宅街には手入れが行き届いた家が並んでいる。

Wの家の前にはバナナ色のおんぼろバンが止まっていた。彼女の家もまわりとは変わらない奇麗な家だが、玄関にある巨大なバラの木には枯れたバラがいっぱい。忙しいシングルマザーにとってガーデニングなんて贅沢なのだろう。

家の中は少々殺風景だった。
「まだ引っ越しの荷物も全部整理できていないの」とWは申し訳なさそうに私たちにいう。最近、隣町から引っ越したばかりらしい。

最初の晩はWと彼女の子供たちと一緒に食事するだけだった。16歳のHはロック少女。BDがロックビデオなどを撮影したと知ってか、ビンテージのストーンズベロマークTシャツを着ていた。長男はやんちゃで落ち着きのない12歳のS。その下が超スィートな7歳のF、そして宇宙からやってきたような3歳児C。経済的には大変だろうが、みんなお互いを労りあって生きているのが伝わり、微笑ましかった。これなら、どういう境遇にあっても大丈夫!

次の日は1日彼らと過ごし、夕方には近くのウォーターパークに全員連れていくことに。子供たちも私たちに慣れ、FとSは一瞬も離れようとしない。特にFはBDと私と手を繋いだり、ウォータースライドが恐い振りをして抱きついたり、人なつっこさで私たちを魅了した。

「グランパ!!グランマ!!」大声で私たちのことをおじいちゃん、おばあちゃんと呼ぶのもなんだかかわいい。
「でもさ、そんな大声で私のことをグランマと呼ばなくてもいいんだよ」と笑ってしまった。私とは血のつながりも何もない彼らだが、私もこのインスタントファミリーが好きになってしまった。